【池上解説】なぜ?景気良くなくても税収過去最高…「過去最高」で分かる今の日本

AI要約

日本国内でさまざまな過去最高が記録されている中、子どもの読書量が過去最高になっている。若者の活字離れとは異なり、2000年代以降は読書量が増加しており、朝の読書運動の普及がその要因となっている。

日本から海外への輸出総額も過去最高になっており、特に自動車や食品の輸出が増えている。EV離れによりハイブリッド車が人気を集めており、日本車の輸出拡大に繋がっている。

また、海外に輸出されている日本の農林水産物や食品も過去最高になっている。緑茶や納豆などの輸出額が上昇しており、日本食ブームや健康志向がその背景にある。

【池上解説】なぜ?景気良くなくても税収過去最高…「過去最高」で分かる今の日本

今年日本国内で色々な過去最高、過去最多が発表されました。中には思いもよらない意外なものもあります。そして過去最高の理由・背景を知ることで、「今の日本」が見えてきます。基礎の基礎から解説してまいります。

今、子どもの読書量が過去最高になっています。意外に思われる方、多いのではないでしょうか。若者の活字離れ、読書離れなんて言葉よく聞きますよね?そんなイメージはあるのに、なぜ増えているんでしょうか。

1955年からの小・中・高校生の平均読書冊数を見てみると、中学生は1か月間に5.5冊を読んで過去最高、小学生に至っては13.2冊で過去最高を記録しています。1か月でこれだけ読むのは大したものです。でもこうしてグラフで見ると順調に読書量は増えてきています。では若者の活字離れ」というイメージはどこからきたのでしょうか。実は1990年代、大型書店が次々とできて、町にある小さな書店が閉店する、ということが起きました。この頃に「活字離れ」と言われるようになったのはきっかけといわれています。

でもそんなイメージとはうらはらに、特に2000年代以降、子どもの読書量は確実に増えています。その理由、若い方は思い当たるのではないでしょうか。そう、学校での「朝の読書運動」です。これは1988年、千葉県の私立の学校で始まったと言われる運動で、毎朝授業の前に10分程度読書をする、というもの。この運動が2000年代に急速に広まり、今では小中高合わせて2万5000校ほどが朝の読書運動を実施しています。素晴らしい習慣ですね。我々も負けてはいられません。 

日本から海外への輸出総額も過去最高になっています。なんと20年前と比べて約2倍、もちろん円安の影響は大きいですが、去年は初めて100兆円を突破しました。

では今一番世界で売れているものは何でしょうか。おそらくは皆さんのイメージ通り、自動車です。2023年の自動車の輸出額は前年の3割増し、17兆円以上となっています。これだけ売れているのはもちろん円安の影響もありますが、それ以外に大きな理由があるんです。それが世界的なEV(電気自動車)離れです。

充電設備がない、走行距離への不安がある、などの理由から今電気自動車の人気が急に失速しています。ヨーロッパの自動車メーカーの中には、100%EV化計画を撤回したところもあります。そんな中今世界で人気なのかハイブリッド車です。ガソリンも使えるし、電気を使ってモーターでも走ることができるハイブリッドは日本が最初に量産した車です。日本が大変力を入れてきた分野なので、日本車が今見直されて売れてきている、というわけです。

さらに海外に輸出する農林水産物・食品の額も過去最高になっています。

例えば抹茶など緑茶の輸出額は過去最高の292億円に、そしてちょっと意外に思われるかもしれませんが、納豆の輸出額も過去最高となっています。

海外の方、納豆苦手そうなイメージありますよね。でも今日本食ブームに加え、健康ブームによって発酵食品である納豆の人気が高まっているんです。ただ、その食べ方はちょっと独特な人もいるようです。例えばメープルシロップをかけたり、さらに牛乳に納豆を入れて飲む、なんて人もいるそうです。ちょっとびっくりしちゃいますね。

そして日本の水産物も今海外で大人気です。中でも中国で大人気なのが、「食べ物以外の水産物」です。つい先日中国が日本の水産物輸入緩和の話が出ましたが、輸入ができないときにも人気だったのが、人魚の涙とも呼ばれるものです。そう真珠です。品質が高い、と世界的に日本の真珠は人気ですが、特に中国の若者の間で日本の真珠がブームになっているんです。でも去年8月の原発の処理水放出以来中国は日本の水産物の輸入を停止してきましたよね?どうやって中国は輸入していると思いますか?こんな抜け穴があるんです。それが香港。香港では日本の水産物輸入停止は食品に限っています。なので一度香港が日本から輸入し、その後中国本土へと流しているんです。

日本は少子化が進んで国内のマーケットはどんどん小さくなっていきますから、今は海外を相手にどう商売するか、そんな時代になってきました。