「人間の体を切ったことがない人にメスなんて持たせられない」 高須院長も警鐘を鳴らす「研修後すぐ美容外科に就職する」新人医師の風潮

AI要約

美容整形外科医の年収や医師の人員不足について報じられた記事。

厚生労働省が美容外科医の流出を防ぐための規制案を検討中。

美容外科医を「直美」と呼ばれる若手医師が増えており、警鐘が鳴らされている。

「人間の体を切ったことがない人にメスなんて持たせられない」 高須院長も警鐘を鳴らす「研修後すぐ美容外科に就職する」新人医師の風潮

 未経験でも1600万円。開業医なら3600万円。大手クリニックの院長クラスだと8000万~1.5億円。医師の転職サイトに出てくる美容整形外科医の年収である。

〈美容クリニック開業に規制案 公的医療の経験必要に〉

 そんな記事を報じたのは9月5日の日経速報ニュースだ。それによると、美容医療などに若手医師が流出していることを受け、厚生労働省が対策に乗り出すという。

 具体的には健康保険法を改正し、保険医療機関(厚労大臣の指定を受けたクリニックや病院)の管理者になる要件として一定期間の保険診療経験を求めるというものだ。美容外科は基本的に自由診療だから、これによって歯止めをかけるという内容だが、背景には外科や産婦人科で志望者が減っており、医師の確保に四苦八苦している現実がある。

「直美(ちょくび)」という言葉をご存じだろうか。医学部を卒業して臨床研修を終えるとすぐ、美容外科に就職する医師のことだ。理由は冒頭にもあるように報酬の高さである。

 厚労省医政局が作成した〈美容医療に関する現状について〉と題する文書によると、2022年度における美容外科の医師数は1230人。08年から比べると、3倍以上の増加である。また、これは、美容医療機関で働く皮膚科医や形成外科医を除いた数字であって、実際にはもっと多くの医師が美容外科で働いている。加えて美容外科医は、半数以上が20~30代というデータもある。日経は毎年約9000人の医師免許取得者のうち、「直美」の数は200人と推定しているが、年々増えているのは間違いない。

 もっとも、厚労省は、

「直美の問題は、私たちも数年前から認識しています。ただし、現時点では具体策が決まっているわけではありません」(医政局医事課の担当者)

 と、ニュースからは、なぜか一歩後退した答え。そこで高須クリニックの高須克弥統括院長に聞いてみる。

「私は、研修を終えたばかりの新人医師を高須クリニックで採用したことはありません。だって人間の体を切ったことがない人に、メスなんて持たせられないでしょう。新しい手術法を考えた時だって、必ず自分の体を使って試したものです。“直美”は美容外科に来る患者さんにとっても危険で、何らかの規制をかけるのは私も賛成です」

 美容整形界の大御所も警鐘を鳴らしているのだ。

「週刊新潮」2024年9月19日号 掲載