「若手に寄り添う」がうまい中堅教員は何が違うか 即「ジャッジを下す」はNG、共に悩み乗り越えて

AI要約

若手教員の悩みや成長を支えるミドルリーダーの重要性について述べられている。若手教員が直面する課題や対処法が示唆されており、子どもとの関わり方や保護者との関係性についても触れられている。

特に、若手教員が直面する子どもへの指導や保護者とのクレーム対応について具体的なアドバイスが述べられている。チームでの対応や振り返りの重要性も強調されている。

教員同士の連携や個々の個性を生かした指導方法が重要であり、若手教員の成長を促すためには裁判官のような立場を避け、信頼関係を築くことが不可欠であることが述べられている。

「若手に寄り添う」がうまい中堅教員は何が違うか 即「ジャッジを下す」はNG、共に悩み乗り越えて

2学期が始まった。夏休みが明けたばかりとあって子どもたちが落ち着かず、手をやいている教員も少なくないのではないか。1年目の「若手さん」であればなおのこと。そんな若手さんの悩みに寄り添い、成長を支えるのはミドルリーダーがキーマンになる。ここでは12年間、公立学校の現場で働き、現在は横浜創英中学・高等学校に勤務する前川智美著『救え!!トイレの若手さん ー若手教師を支えるミドルリーダーの接し方ー』から若手育成のポイントについて一部抜粋、再構成してお届けする。

「いい先生になりたい」「もっと成長したい」……子どもたちへの思いが強ければ強いほど、空回りばかりしてしまう。がんばりたい気持ちはあるのに、なかなか前に進めない。誰かに相談したいけど、そもそも相談していいことなのかわからない。仕事の優先順位がつけられず、すべての仕事を同じ熱量でこなそうとして、疲弊してしまう。

そんな不器用な「若手さん」を見たら、「ひ弱すぎる若手教員」「ちょっとネガティブすぎない?」と感じる人もいるでしょう。「いやいや、そういう若手さんなら、うちの学校にもいるよ」という人もいるかもしれません。

自らネガティブになりたいと望む若手さんはいません。その裏には必ず原因があり、周りに迷惑をかけてしまうことへの不安と、若手さんなりの遠慮や気遣いがあります。どうにかしたいのにうまくいかなくて、若手さんは本当に困っている状態です。

私はこれまで12年間、公立学校の現場で働いてきました。私がその間に接してきた若手教員との日常や、現場で見聞きしたこと、お世話になった先輩方の姿をもとに、「こんなミドルさんがいたら、みんながハッピーになれるなぁ」と思いながら、ミドルさんの傍で一人前に成長していく若手さんの物語を描きました。その一部を漫画とともに紹介します。

「子どもが言うことを聞かない」「子どもからナメられて反抗される」。若手さんにありがちな悩みですが、問題は悩みそのものではありません。若手さんを「ドツボにはまらせない」ことです。そもそも初任者は「指導力がない」のがデフォルトです。

先輩教員から「それくらい自分で注意できないと、これからやっていけないよ」なんて言われた日には、若手さんは「やっぱり私、教員に向いてないんだろうか」などと諦めモードになってしまいます。必要以上に追い詰めすぎないようにしたいものです。

そもそも、「子どもに反抗される」「反抗されたらどうするか」という発想自体が、古い世代の発想です。子どもの反抗的な態度を対立的に捉えるのではなく、「何かに困っている子どもだ」と捉え、伴走するための手立てを考えていくことが大切です。

まずは「実態を把握する」という意味でも、相談を受けたらすぐに教室へ足を運びたいものです。実態を把握できたら、該当する子どもを呼んで、「実は廊下を通りがかったときに君の声が聞こえたから、気になって様子を見ていたんだ。何か困っているのかな?」「どうしたいと思っているの?」などと話を聞いてみるのもよいでしょう。

大切なのは教員一人ひとりの個性を生かしつつ、若手さんの特性に合った対策、子どもとの関わり方を一緒に考えていけるようにすることではないでしょうか。

例えば、現場の先生方に「生活指導って何ですか?」と聞いたら、おそらくその答えは人によってまちまちでしょう。

「生活指導」の定義は、学習指導要領に明記されているわけではありません。そのため、少なくとも中学校の現場では「生活指導」という名の下に、形骸化した校則を守らせたり、何のために行うのかよくわからない活動を行わせたりするといった現状も見受けられます。

考えるべきは、「何のために」指導をするのか、課題は? 目的は? どんな子どもを育てたいのか。そのために、子どもにどんな「手段」や「支援」が必要だったのか。

特に初任者の場合には子どもとの信頼関係が浅いため、頭ごなしに叱ったり、闇雲に褒めたりしていては逆効果になることもあります。そうならないようにするには、子ども理解から始めていくことが大切です。

私は、かつての自分への反省の意味も込めて、若手さんには、安易に「叱り方」だけを真似して、信頼を失ってしまうような教員にはなってもらいたくないと思っています。

何より、ミドルリーダーは裁判官であってはならないと考えています。保護者からクレームが来たときもそうです。若手さんに対してやってはいけないのは、即座に「ジャッジを下す」ことです。

かといって「この保護者、最悪だね」とか「悪いのは子どもだから」などと言うのもよろしくありません。課題が解決しないばかりか、若手さんの成長を阻害してしまうからです。

では、具体的にどうすればよいのでしょうか。まずは保護者は最終的に何を望んでいるのか、教員側は何を望んでいるのか、お互いの最終的なゴール地点を探っていくこと。次に必要なのは、「事実と解釈を分ける」ことです。

クレーム対応をする際、「事実」は誠実に受け止める。それに対して、個人の「解釈」については、あまり重く受け止めすぎないようにする。そのほうが心身の健康のためによいと思われます。

ゴール地点と課題解決の手段が明確になったら、あとはやはり「チームで対応」です。管理職や他の教員とも連携を図ります。ミドルさんは周囲の教員や保護者に、若手さんも「目的に向かって改善しようと努力している」ことを伝えていきます。無事、騒動が収まって落ち着いたら、若手さんと一緒に冷静に振り返りをしてみましょう。