尖閣領空守る矜恃 警戒航空団飛行警戒監視群第603飛行隊、田中康督3等空佐 国民の自衛官 横顔④

AI要約

航空自衛隊那覇基地に配属された早期警戒機「E2C」は、尖閣諸島の領空を360度監視する特異な機体である。

パイロットには機体の特性を活かし、円盤の水平を維持しながらの旋回技術が求められており、総飛行時間7千時間に到達するまでの努力が結実している。

災害時やイベント時には24時間体制での哨戒任務も行い、警戒監視の重要性を認識しながら任務に取り組んでいる。

尖閣領空守る矜恃 警戒航空団飛行警戒監視群第603飛行隊、田中康督3等空佐 国民の自衛官 横顔④

尖閣諸島(沖縄県石垣市)から約400キロ離れた航空自衛隊那覇基地に、大きな円盤を載せた奇妙な航空機が配属されている。早期警戒機「E2C」。円盤は回転式のアンテナで、尖閣の領空領土を360度監視しながら、航空機や船舶を切れ目なく警戒する。

低空で領空に接近する航空機は地上のレーダー網をかいくぐるが、E2Cなら探知できるため「空飛ぶレーダーサイト」とも呼ばれる。F15戦闘機を操縦していたが「空自内でもベールに包まれていた」E2Cのパイロットに起用された。

戦闘機は自在に飛ばせるが、監視飛行中のE2Cは、機体を傾けて旋回できない。4枚ある尾翼を調整し、円盤の水平を維持しながら旋回する技が求められた。

たゆまぬ研鑽が、空自初となる早期警戒管制機などの総飛行時間7千時間達成につながった。

飛行任務は幅広い。平成20年の北海道洞爺湖サミットでは、24時間態勢で哨戒。「文字通り、穴があってはいけないという気持ちで臨んだ」。23年の東日本大震災では空から被災地の情報収集に当たった。「(青森県の)三沢で被災した妻子のことが気がかりだったが、今は家族のことは忘れて任務に集中しなければ」と心に決め、操縦桿(かん)を強く握りしめた。

「特別なことをしたつもりはない」と謙虚に語りつつ、「警戒監視の任務は誇り。その重みを感じている」。領空を守るスペシャリストは、表情を引き締めた。(大竹直樹)