加藤勝信氏、「経験」と「保守」で苦戦の自民総裁選に活路 派閥支援なく知名度も不足

AI要約

加藤勝信元官房長官が自民党総裁選出馬を表明し、党員支持拡大のために苦労している。彼は安倍晋三元首相の経済政策「アベノミクス」の継承や保守路線、要職経験を強調して活路を探っている。

加藤氏はアベノミクスを意識した経済政策「ニッポン総活躍」を打ち出し、安倍氏との連携や保守派の支持を集めようとしている。

しかし、加藤氏は知名度や支持率で苦戦しており、他の候補と比べて草の根選挙で支援を求める姿勢が強い。一方で、安倍氏との一体感を前面に出して支持を固めようとしている。

加藤勝信氏、「経験」と「保守」で苦戦の自民総裁選に活路 派閥支援なく知名度も不足

10日に自民党総裁選出馬を表明した加藤勝信元官房長官は、国会議員20人の推薦人集めに苦労した。党員の支持拡大のために重要な知名度も伸び悩み、苦戦が予想される。「一心同体」だった安倍晋三元首相の経済政策「アベノミクス」や保守路線の継承、要職を歴任した経験を打ち出して活路を見いだす。

■「安倍さんと一心同体」

「安倍首相と一緒にアベノミクスを推進してきた。私の中にその精神が染み込んでいる」。加藤氏は10日の記者会見で、公約はアベノミクスを意識したのかと問われ、こう答えた。

加藤氏は、国民所得倍増を柱とする「ニッポン総活躍」プランを発表した。規制改革や予算・税制措置を総動員し、経済成長の好循環を実現すると主張した。

経済政策はアベノミクスと通じる。「ニッポン総活躍」というネーミングは、安倍氏が提唱し、加藤氏が初代担当相に抜擢(ばってき)された「1億総活躍」と重なる。加藤氏がこれまで取り組み、公約にも盛り込んだ憲法改正や北朝鮮による日本人拉致問題の解決は、安倍氏のライフワークだった。

加藤氏は平成24年に安倍氏が首相に返り咲く基盤となった保守系議員連盟「創生日本」のメンバーで、安倍、菅義偉両政権で官房長官と副長官を計約4年務めた。ある党幹部は「候補者の中で加藤さんが官邸のことを一番分かっている」と評価する。

加藤氏は月刊誌「正論」7月号のインタビューで「安倍さんと一心同体みたいな思いで、ずっとやらせていただいた」と振り返った。陣営は、保守派の国会議員や党員の支持の広がりにも期待する。

■草の根選挙、道のり険しく

しかし道のりは険しい。所属する茂木派からは茂木敏充幹事長も立候補し、林芳正官房長官(旧岸田派)や河野太郎デジタル相(麻生派)のように派閥の議員の一定数がまとまった支持はない。支援を期待した菅氏は小泉進次郎元環境相を選んだ。地元・岡山県選出議員らを中心に「草の根選挙」(推薦人の一人)を展開するしかない。

「選挙の顔」としての期待値も小泉氏や石破茂元幹事長らに及ばない。8月の産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査で次の総裁にふさわしい人に加藤氏を挙げた回答は0・6%。根のまじめさから、茂木氏の「防衛増税停止」のような奇策を打ち出すこともなかった。

加藤氏に近いベテラン議員は「安倍さんが生きていたら加藤さんを応援したのではないか」と語るが、安倍氏はもういない。(田中一世)