医療・介護「どこでも安全安心」 横須賀・三浦地区で利用者情報共有

AI要約

神奈川県の横須賀・三浦地区で医療機関や介護施設が情報を共有する「さくらネット」が始まった。

患者や利用者は無駄な処置を避けられるだけでなく、医療機関や介護施設は安全なサービス提供ができるとされる。

地域医療ネットワークを強化する取り組みであり、マイナ保険証よりも多くの情報を共有可能。セキュリティーにも注意が払われている。

医療・介護「どこでも安全安心」 横須賀・三浦地区で利用者情報共有

 神奈川県の横須賀・三浦地区の医療機関や介護施設が患者や利用者の情報を共有する「さくらネット」の運用が4日、始まった。患者や利用者にとっては無駄な検査や薬の処方を避けられ、医療機関や介護施設側も安全に医療や介護を提供できるという。

 横須賀・三浦2次保健医療圏(横須賀、鎌倉、逗子、三浦、葉山の4市1町)と隣接する藤沢市と横浜市の金沢、栄、戸塚の3区にある32病院、75診療所、74薬局、88介護施設・訪問看護ステーションの計269施設が参加する見込みだ。すでに医療圏内の主な病院は参加しているという。

 患者や利用者がインターネットからさくらネットに登録すると、参加する施設では手術や注射の処置歴や服薬の情報、CT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴断層撮影)の検査画像を閲覧できる。要介護度などの介護関連の情報も共有する。

 地域の中核病院である横須賀共済病院(横須賀市)と湘南鎌倉総合病院(鎌倉市)が中心になって設置した「さくらネット協議会」が運営する。

 協議会理事長の横須賀共済病院の長堀薫院長は8月27日の記者会見で「地域医療では、病院ごとに機能をわけてネットワーク化した上で治療することが求められている。情報を共有化して、みなさんの役に立ちたい」と述べた。

 横須賀共済病院と湘南鎌倉総合病院では急性期医療に力を入れており、年間でそれぞれ1万4千台と2万2千台の救急車を受け入れている。情報共有が進むことで適切な診療に役立つという。

 マイナンバーカードと健康保険証が一体化した「マイナ保険証」でも特定健診や薬剤の情報がひもづけられているが、さくらネットではより多くの情報を共有できる。セキュリティーにも配慮し、国のガイドラインに準じた上で、閲覧者の履歴を残し、職種によって見られる情報を制限するという。

 地域の診療情報を集約するシステムは、横浜市の一部で実施されている「サルビアねっと」に続いて県内で2例目。県は導入に必要な約4億9千万円を協議会に補助する。

 黒岩祐治知事は会見で「(医療圏を越えて)しみ出すように登録が増えている。神奈川県に住むみなさんがどの病院、介護施設にかかっても自分の情報が上がって、安全安心な医療、介護が受けられるように期待したい」と話した。(増田勇介)