不登校の子の「成績評価」サポート、元教頭の奮闘 フリースクールを開校して学校と積極的に連携

AI要約

文部科学省が教育現場に不登校児童生徒の学習成果の評価について改正を求める。フリースクールアリビオの取り組みも紹介。

大石真弘氏が30年以上の教員経験を持ち、不登校児童生徒への支援に取り組む理由や現状について語る。

不登校児童生徒の欠席が評定に影響し、進路の幅が狭まる現状について大石氏が指摘。

不登校の子の「成績評価」サポート、元教頭の奮闘 フリースクールを開校して学校と積極的に連携

文部科学省は8月29日、不登校児童生徒の欠席中の学習成果が適切に評価されるよう、学校教育法施行規則の一部を改正した。今後、教育現場には、成績評価への積極的な対応が求められる。こうした中、学校に連携を働きかけ、教室外の学びが評定につながるよう尽力しているフリースクールがある。2023年7月、長崎県長崎市に誕生したフリースクールアリビオだ。30年以上の教員経験を持つ代表の大石真弘氏に、不登校児童生徒の成績評価や学校と学校外施設の連携のあり方について聞いた。

長崎県内の公立中学校で社会科教員として勤務していた大石真弘氏。長崎県教育センター教育相談課で不登校の児童生徒やその保護者の教育相談を担当したほか、長崎市立中学校の教頭も務めた。そうしたキャリアを手放してまで、大石氏がフリースクールを設立したのは、「必要な子に支援が届いていない」と長年感じていたからだという。

「30年以上教員をしていて、担任を務めた学級に不登校の子がいないことはありませんでした。別室登校で自主学習する子が多い学校での勤務も経験しています。そこでは、空き時間の先生を見守りとして充てるのが精一杯で、学年も心の状態も異なる生徒たち1人ひとりに勉強を教えるのは非常に困難でした。オンラインで教室の授業を中継して別室で学ぶ子もいましたが、文科省のルールでは、授業を受ける側にも教員がいないと授業を受けたことにはなりません。生徒1人ひとりに教員をつける余裕はありませんから、出席にはなっても欠課扱いになってしまう状況でした」

欠課が多いと、定期テストを受けても「評価材料が少ない」と見なされ、成績がつかない。すると、「中学校なら9教科すべて『評定不能』や『斜線』となり、評定(内申点)がついてもオール1の通知表になってしまう」(大石氏)。この現実が生徒の進路に大きな影響を与えると、大石氏は指摘する。

「長崎県の公立高校の入試では、9教科5段階評価で3年間の評定が必要。入試の得点が50%、中学校の評定が50%で評価されて合否が決まります。評定の基準をクリアすれば1次試験で合格という私立高校もあり、評定は入試において重要な要素となっています。しかし、3年間不登校だと、評定は135点満点中27点。これでは全日制高校の合格は難しい。入試の得点と評定の割合は都道府県や学校によって異なりますが、全国的に評定が不登校の子の進路選択の幅を狭めている一番の原因になっていると言えます」

別室で学んでも評価されない現状をどうしたらよいのかと考え続けていた中で、教育機会確保法が2016年に成立。不登校などの児童生徒に対し、学校に限らず学びの機会を確保し、出席を認めていくことが示された。さらに2019年の文科省の通知「不登校児童生徒への支援の在り方について」において支援の強化が求められるようになり、大石氏は教員を辞めることを決めたという。

「2019年の通知には、自校の児童生徒がフリースクールなどの学校外施設に通っている場合、学校が主体となって積極的に連携して学びを評価することの意義が書かれていました。しかし、今の学校現場はいっぱいいっぱい。生徒数の多い学校では不登校の生徒が40人、つまり1クラス分くらいいるわけで、いくつもの学校外施設と連携することは難しい。別室登校の生徒も十分に支援できていないのに、外部との連携は無理だろうと思いました。実際、全国的にも学校と連携して評価まで踏み込んでいる学校外施設は見当たらず、『僕が学校外施設を作って不登校の子と学校をつなぐ役割を全部やればいいんじゃないか?』と思ったのです」