宜野湾市長選告示 政府、普天間移設急ぐ 結果次第で固定化の懸念

AI要約

宜野湾市長選での争点は、普天間飛行場の辺野古移設の是非で、移設容認派と反対派の激しい戦いが繰り広げられている。

沖縄県と政府の法廷闘争で県側が敗訴し、辺野古移設が進められる中、工事に要する時間や移設の影響について懸念が広がっている。

普天間問題は28年を経ても解決が見えず、安全保障環境の厳しさや移設反対派の声によりさらなる混乱が予想される。

1日に告示された沖縄県宜野湾市長選は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設の是非が主な争点となる。元宜野湾市長の佐喜真淳氏が移設を容認した前市長の路線を継承する一方、元市議の桃原功氏は普天間の即時運用停止と移設反対を訴える。政府は普天間の危険性除去には辺野古移設が「唯一の解決策」として工事を急ぐ方針だが、選挙結果によっては、普天間のさらなる固定化が懸念される。

辺野古沖の軟弱地盤改良工事を巡る国と沖縄県による法廷闘争は2月に県側の敗訴が確定し、玉城デニー知事は移設を阻止するための法的な対抗手段を失った。政府は8月、軟弱地盤の広がる大浦湾側での本格工事に着手した。移設には多くの年月を要し、政府は工事着手から米側への施設提供手続き完了まで約12年かかると試算する。

普天間を抱える宜野湾市では、平成24年の市長選で辺野古移設に反対だった現職を破り佐喜真氏が当選して以降、松川正則前市長まで移設容認の市長が続いた。防衛省幹部は「普天間の返還に向けて10年以上、国と市が手を携えてやってきた」と話す。

6月の沖縄県議選では、玉城氏を支持する「オール沖縄」勢力が大幅に議席を減らし、対抗する保守系勢力が16年ぶりに過半数を奪還した。玉城氏の支持基盤が揺らぐ中、保守系は令和8年の知事選での勝利を目指す。ただ、仮に今回の宜野湾市長選で移設反対派が当選すれば、県と宜野湾、名護両市のトップを容認派が占めて移設を進めやすくなる「『惑星兆列』が遠のく」(政府関係者)ことになる。

平成8年に日米両政府が普天間の全面返還に合意してから28年をへて、東アジアの安全保障環境は一段と厳しさを増している。沖縄は、日本周辺で軍事活動を活発化させる中国と対峙(たいじ)する最前線で、在沖縄米軍基地の重要性は高い。

米軍内には滑走路の長さや地理的条件から辺野古よりも普天間の方が軍事的有用性は高いとの見方もある。地元で辺野古移設反対の声が強まれば、一日も早い普天間の返還という願いとは逆に移設が滞る恐れがある。

(小沢慶太)