「故障した戦闘機は全部海岸沿いに廃棄」…硫黄島の元陸軍伍長が目撃した「妙な光景」

AI要約

硫黄島で発生した日本兵1万人の消失の謎と、島で起きていた出来事について探究するノンフィクションの話題に。

米軍の空襲による被害や工兵隊の補修作業、時限爆弾の危険に晒された現実。

物量の差を目の当たりにし、敗北を感じた著者としての体験談。

「故障した戦闘機は全部海岸沿いに廃棄」…硫黄島の元陸軍伍長が目撃した「妙な光景」

なぜ日本兵1万人が消えたままなのか、硫黄島で何が起きていたのか。

民間人の上陸が原則禁止された硫黄島に4度上陸し、日米の機密文書も徹底調査したノンフィクション『硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ』が11刷決定と話題だ。

ふだん本を読まない人にも届き、「イッキ読みした」「熱意に胸打たれた」「泣いた」という読者の声も多く寄せられている。

西さんは「妙な光景」を目撃したこともあった。

「本土から持っていった隼はみんな旧式でした。だから半分ぐらいは十分に使えなかったですね。故障した機体は全部、海岸沿いに廃棄するわけですよ。艦砲射撃でこの飛行機を撃て、というようにね。海に向かって置くわけです。ほかの被害を減らすためにですね。海岸に運ぶのを見ていましたよ。自分でプロペラを回して自走して行っていました。妙な話ですよね。敵に撃たれるのではなくて、故障が多かったですよ。海に並べたのは12月だったと思います。私が見たのは2~3機並べられた光景でした」

空襲のターゲットは主に飛行場だった。航空戦力の無力化を図るためだ。しかし守備隊の補修作業は見事だったという。

「空襲を済ませた敵が退散しますとね、もう飛行場に何ヵ所も大きな爆弾の跡があるわけですね。それを工兵隊20人ぐらいがトラック2~3台で乗ってきましてね、そして飛行場でトラックから飛び降りて、みんなでその穴埋めですよ。スコップをみんな持っていましてね、穴埋め。もう慣れたものですよ。そうすっと家の建物の1戸分ぐらいの穴が空いているのがですね、20人で取りかかって穴を埋めました。たちまち元の飛行場になりました。そしてロードローラーで押し固めるわけですね。すると元の飛行場になるわけですよ。ロードローラーは1、2台ありましたね」

工兵隊の中には穴埋め以外の作業を行う者もいた。

「(米軍が落とした中に)時限爆弾があったんですよ。10分とか20分とか。時には10時間ぐらいたってから。我々が晩に寝ているときもですね、あちこちでバーンバーンと破裂するんですね。どこに落ちているか分からないでしょ。いつ爆発するか分からない、危ないでしょ。トラックには、(穴埋め作業の兵隊と)別の兵隊が2、3人乗っていましてね。長さ3メートルぐらいの細い竹を持っていた。竹の先頭に小さな赤旗が付いていて。その竹を持って、時限爆弾が落ちている場所を探るわけですね。兵隊は慣れていて、どこに落ちているか分かるんですね。そいでそこに竹ざおを(目印として)刺すんですよ」

こうした爆弾の雨は連日続き、やがて西さんはこんな思いになったという。

「(滑走路に落としてもすぐに修復されるから)米軍が落とす爆弾はほとんど無駄弾ですよ。しかし、米軍がいくら落としても無限に爆弾を持っているわけですね。いかに物量が豊富か分かるわけですよ。そうした現実を見たときに、敗北を直感しましたね」