稲の収穫・出荷への影響避けられず 生産意欲高めていた若手農家、出鼻くじかれ肩落とす【秋田・7月下旬の大雨】

AI要約

秋田県で記録的な大雨による農林水産関係の被害額が119億5500万円余りに上り、由利本荘市の若手農家も被災した。

若手農家の齋藤颯さんと齋藤諒汰さんは、拡大した栽培面積を持ちながら大雨に見舞われ、農業の不安が広がる。

被害復旧の難航や柔軟な対応が求められる中、農家は毎年の異常気象に向き合いながら前進を図っている。

稲の収穫・出荷への影響避けられず 生産意欲高めていた若手農家、出鼻くじかれ肩落とす【秋田・7月下旬の大雨】

7月下旬の記録的な大雨による秋田県の農林水産関係の被害額は、8月16日時点の県のまとめでは、119億5500万円余りに上っている。

河川の氾濫が相次ぎ、大きな被害が出た由利本荘市でコメや果樹を栽培する若手農家は、栽培面積を拡大し生産意欲が高まる中で今回の大雨に見舞われた。

由利本荘市西目町の農家・齋藤颯さん(21)と齋藤諒汰さん(27)。

2人は同じ地域で農業を営む仲間で、それぞれがコメや果樹などを生産している。

7月の大雨を振り返り、齋藤颯さんは「プールみたいな状態。稲は全く見えないし、俺らは見ていることしかできなかった」と話す。

齋藤颯さん:

これがうちの田んぼで、川があふれたときに砂が入っちゃって。手前にあった稲は砂をかぶって全部駄目。

齋藤諒汰さんも「去年以上に力を入れていたところもあるので、一発目でこれか…」と肩を落とす。

この地域の農家は年々減少していて、2人は2024年から地域の農家から土地を引き継ぎ、栽培面積を増やした。生産意欲が高まり、収量の増加を期待していた中で大雨に見舞われた。

記録的な大雨から3週間がたち、田んぼの横を流れる川は穏やかに見えるが、川底には土砂が堆積していて、少しの雨でも水があふれる恐れがあるという。

齋藤諒汰さんによると、普段の川は、いまよりも40~50cmは深いという。

また、齋藤颯さんは「このあとの台風、こっちの方に来そうなのがあるから、どれだけ雨が降るか分からないけど、雨の量が一番心配かな」と表情を曇らせた。

被害は農地以外にも及んでいる。

齋藤颯さんによると、田んぼに水を引いていた川に土砂が入り込み、一部がえぐれてしまった。そこを直さないと水を引くことができない状態だ。

そして何よりも、田んぼに何が入っているか分からないため、コンバインを入れられない可能性がある。コンバインでの刈り取りができない場合は、草刈り機で刈るつもりだという。

さらに、収穫したコメの乾燥と出荷までを担うJA秋田しんせいのカントリーエレベーターが水に漬かった。2人の田んぼは例年、9月下旬から3週間ほどで稲刈りを終えるが、「刈るスピードも上げられない。乾燥の施設も使えないからその分をほかでカバーしなければいけないので、普段より時間がかかるし、日数もいままでよりかかるんじゃないかな」と齋藤諒汰さんは話す。

稲刈りが長引くとコメが育ちすぎるほか、果樹の収穫時期に重なり、手が回らない可能性がある。

齋藤颯さんは「いままで通りに田んぼの状態を戻せれば一番良いが、そう簡単にできるものじゃない。去年も大雨があったし、毎年こんな感じで続くとなれば、ちょっとね。できるところはとって、また来年できるか分からないけど、やっていければ良いかなという感じ」と話す。

クマなどによる被害や猛暑などで例年の半分ほどの収量にとどまった2023年。そして2024年もまた大雨に襲われた。毎年異なる気象に振り回されながらも、農家はなんとか前を向こうとしている。

(秋田テレビ)