【プレイバック’14】「身体の中を見たかった」同級生を殺害した女子高生 凶行直前の〝シグナル〟

AI要約

2014年7月27日未明に起きた佐世保女子高生殺人事件を振り返る。高校1年生の女子生徒が同級生を殺害し、凶行の詳細や背景に迫る。

犯人であるX子の過去の問題行動や家庭環境が事件に与えた影響を探る。X子は優秀な少女だったが、母の急逝や父の再婚などの出来事により精神的に不安定になっていた。

X子は殺人欲求を満たすために友人を襲い、想像を絶する凶行を行ったが、ASD(自閉症スペクトラム障害)併存障害を持っており、環境的要因も影響していた。X子は医療少年院送致の決定を受けたが、その後の処遇に対する議論が続いている。

【プレイバック’14】「身体の中を見たかった」同級生を殺害した女子高生 凶行直前の〝シグナル〟

10年前、20年前、30年前に『FRIDAY』は何を報じていたのか。当時話題になったトピックをいまふたたび振り返る【プレイバック・フライデー】。今回は10年前の’14年8月15日号掲載の「深層ルポ 東大志望16歳が同級生をバラバラにするまで」をお届けする。

‘14年7月27日未明、佐世保市の県内屈指の進学校に通う高校1年生の女子生徒の自室から、中高の同級生である友人が首などを切断された遺体で発見された「佐世保女子高生殺人事件」。逮捕された女子生徒はなぜ、友人に手をかけたのか。彼女の家庭環境や過去に起こしていた〝事件〟を巡って、さまざまな憶測が乱れ飛んだ(以下《 》内の記述は過去記事より引用)。

◆遺体の首と左手首が切断され……

「あまりにも突然のことでまだ何も考えられません。Aは私たちにとって大切に育ててきた宝物でした」

殺されたAさん(当時15)の両親は当時弁護士を通じてそう心境を発表した。Aさんは’14年7月26日午後2時すぎに外出、その後「7時ぐらいに帰る」とメールをしてきたきり、午後11時になっても帰って来なかった。母親は1週間前にAさんから、この日は同級生のX子(当時16)と遊ぶことを聞かされていたという。Aさんの家族は警察に通報した。そこから衝撃の事態が発覚する。当時の様子は以下のようだった。

《深夜3時すぎ、警察官とX子の両親が、佐世保市内のマンションで1人暮らしをしているX子を訪ねた。

「知らんけど」

彼女は表情ひとつ変えずに、そうシラを切った。室内に踏み込む警察官。そこには、無残な姿でベッドの上に横たわるAさんの遺体があった。

「遺体の首と左手首が切断されており、腹は大きく切り開かれていた。ベッドのそばにはノコギリと2種類のハンマー、包丁があった。X子はAさんの後頭部をハンマーで殴り、首をヒモで絞めて窒息死させた後、ベッドで遺体を解体したようだ。凶器は事前に近所で買っており、衝動的でなく計画的な犯行と見ている。しかもX子の衣服には返り血がついていなかった。なぜか殺害後にちゃんと着替えていたようだ」(捜査関係者)

逮捕されたX子は取り乱すことなく犯行を認め、佐世保署では淡々と供述していたという。

「人を殺してみたかった。身体の中を見たかった。ウラミはない」》

殺害の5~6時間前、X子と亡くなったAさんは仲良さげに地元商店街を歩いていたという。2人の共通の趣味はアニメで、物静かで暗い印象のX子に対して明るい性格のAさんが、唯一の友達といってもいい存在だったようだ。X子は自分のことを「ボク」と呼ぶなど、少し変わった少女だと周囲からは思われていたようだが、佐世保市役所の関係者は今回のニュースを聞いて、4年前のある一件を思い出したという。

《「親しい知人から相談を持ちかけられたんです。内容は、『佐世保市内の小学校で、給食の味噌汁の中に塩素系漂白剤を入れた女子児童がいて、クラスメイトたちが激しく嘔吐するなどの症状を起こした。それも一度だけでなく複数回あった。これは深刻な問題なので公表してほしい』というものでした」

漂白剤を混入した女子児童が、当時小学校6年生のX子だった。このときX子の両親は、事件が表ザタにならないように奔走した。市役所関係者が続ける。

「A子の父親は県内でもヤリ手として有名な弁護士。母親は佐世保市教育委員会の教育委員でした。この件で、母親は保護者会で土下座をして謝ったそうです。他の父母たちも大ごとにしたくないとい う意見が大半で、結局、この一件は教育委員会や市議会にも報告されることなく闇に葬られました。私に相談しにきた知人も、『公表するのは中止してほしい』と言ってきた。理由を尋ねると、『当時者の両親同士で示談が成立した』と言う。あのときにしっかりと検証していれば、今回の事件は起きなかったかもしれません。両親がトラブルを隠そうとしたことが、取り返しのつかない結果を招いたの ではないでしょうか」》

X子の両親は地元の名士で、彼女自身も成績は優秀だった。小、中学校ともに成績はトップクラスで高校に入ってからは東大を志望していたともいう。優秀だったのは学業だけではなく、小学校時代はピアノコンクールで入賞。中学時代にはスピードスケートで県代表として国体にも出場し、県の美術展にも入賞している。まさに文武両道の優秀な少女だったのだ。

だが、事件の前年にX子の身には不幸な出来事が起こっていた。「お母さんのことが大好きだった」(近隣住民)という彼女の母親が、’13年10月にがんで急逝してしまったのだ。そしてその数ヵ月後に父親が別の女性と交際を始め、’14年5月に再婚している。母の死からまだ間もないのに父親が別の女性を連れてきたことについて、X子は戸惑っていた、という証言もあった。そして’14年3月2日にはある〝事件〟も起きていたのだ。

《「ちょうど父親が女性と交際を始めた 頃、A子は父親の寝込みを金属バットを持って襲い、頭蓋骨が陥没するほどに殴りつけ、歯も折ったという話です。これは手に負えないと感じたのか、父親は、『娘はオーストラリアに留学する』と周囲に取り繕っていました」(前出・近隣住民)》

X子は’14年4月に高校に入学すると、実家を出て父親の法律事務所の近くにある家賃5万円のワンルームマンションで1人暮らしを始めた。高校には1学期に3日ほどしか授業に出ていない。周囲には海外留学の準備と言っていたようだが、昼間からブラブラしている姿を、たびたび近隣住民に目撃されていた。母の死をきっかけに東大へ行くという夢は見失って、今回の凶行に至ってしまったのだろうか。

’14年8月4日にX子の父親は弁護士を通じて、事件までの経緯について次のように明らかにしている。

事件4ヵ月前の父親を殴打した件の後、X子は精神科へ通院させられていたという。1人暮らしを始めたのは父親が医師から「同じ家で寝ていると、命の危険がある」と警告されたためだ。また、事件3日前の7月23日にX子が通院中の精神科へ向かう途中に継母に「人を殺したい」と真剣な様子で打ち明けていた。そのことを医師に相談したものの、あまり真剣に取り合ってもらえず、さらに事件前日にも入院させてくれないかと頼んだが、実現しなかった。結局、児童相談窓口に連絡することで話がまとまったものの、その日は勤務時間外で職員が不在で相談できなかったという。

’14年10月5日、X子の父親は自宅で首を吊った状態で発見された。遺書はないものの、自殺とみられている。

‘15年7月13日、長崎家裁はX子に対して医療少年院送致による保護処分の決定を出した。決定要旨では犯行について《殺人や死体解剖の欲求を満たすため、少女を信頼して無防備だった友人に突然襲いかかり、想像を絶する苦しみを与えながら生命を奪い、遺体をもてあそび、人の尊厳を踏みにじった快楽殺人》と断じた。X子には《重度のASD(自閉症スペクトラム障害)併存障害として素行障害を発症している》としながらも、《ASDが非行に直結したわけではなく、環境的要因も影響している》とした。

決定要旨で明らかになったのは、小5のときに、下校中に見た猫の死骸に引き付けられ、猫を殺すようになったことだった。そして、小6のときの給食への異物混入事件があったものの、継続的なカウンセリングなども行われることはなかった。中学校に入ると親しい友人も出来て学校に馴染む一方で、猫を殺すだけではなく解体するようになり、次第に「人を殺したい」と思うようになったという。さらに16歳を超えると刑事罰を受ける可能性が高くなることを知って、16歳になる前に殺人や解体の実行を決意したというのだ。

‘21年7月にX子が23歳になることを機に収容先の院長が収容継続を長崎家裁に申請した。これに対して家裁はX子の精神に著しい障害があり、専門的な矯正教育を続ける必要があるとして、’24年までの収容継続を認める決定を下していたことを9月15日に朝日新聞が報じている。法律では家庭裁判所が下した決定は、’24年の夏にX子が26歳になった段階で効力を失い、延長されることはないという。