文部科学省が「教育データ利活用のステップ(β版)」を作成

AI要約

文部科学省が教育データの利活用に関する有識者会議で示した文書には、教育委員会向けのステップガイドが含まれており、教育データの活用方法が解説されている。

教育データの利活用には様々な方法があり、地域や学校の実態に合わせて活用できる。例えば、クラス単位のデジタル教材利用状況を活用したり、地域データを集めてEBPMに活かす方法もある。

教育データ利活用のステップとして、教育ダッシュボードを導入することが最初のステップとして位置づけられており、先進的な自治体では既に導入が進んでいる。

文部科学省が「教育データ利活用のステップ(β版)」を作成

 文部科学省は2024年8月2日に開催された「教育データの利活用に関する有識者会議」において、教育委員会向けに「今からはじめる!NEXT GIGA 教育データ利活用のステップ(β版)」(以下、「本文書」と表記)という文書を示した。「『教育データを利活用したいけれど何から始めたら良いか分からない』という教育委員会の担当者を主な対象とし、教育データを利活用していくまでのステップについて解説した」としている。

 2024年3月29日に発表された「教育データ利活用の実現に向けた実効的な方策についての議論のまとめ」は、「国は、自治体がそれぞれの実態に応じ、選択的かつ段階的にシステム導入に係る取組を始められるよう、さまざまな切り口から支援することが急務である」と指摘していた。これを受けて作成されたのが本文書で、教育データの利活用を3つのパターンに分け、それぞれの導入・運用に必要な工程を解説している。

 教育データは、その内容と利用する主体によってさまざまな活用方法がある。例えば、端末やデジタル教材の利用状況をクラス単位でまとめれば、学級・学年運営の参考になる。より広範囲に地域のデータを集めることで、教育のEBPMに生かすこともできる。児童・生徒がデジタル教材をどう操作したかといった細かなデータを分析すれば、授業や教材を改善するラーニングアナリティクスも可能だ。

 本文書では「教育データ利活用のステップ」と称してはいるものの、その内容はデータを集約して可視化する教育ダッシュボードに絞られている。一部の先進的な自治体では、教育データ利活用のファーストステップとして、各種のデータを1つの画面にまとめ、必要に応じてグラフ化して分かりやすく表示するダッシュボードの実用化が始まっている。

 本文書では、学校・教育委員会における教育データの活用方法を以下の3つに分類している。

【1】 単一ツール・システムを用いたデータ利活用

【2】 データ連携機能付システム(仮称)による複数ツール・システムのデータを用いたデータ利活用

【3】 独自に構築したシステムによる複数ツール・システムのデータを用いたデータ利活用

 パターン【2】 は、学習eポータルに準拠した教育向けプラットフォームのダッシュボード機能や、グーグルが提供する「Looker Studio」のような分析機能を想定しているようだ。これらの機能を使えば新規のソフトウエア開発は必要なく、既にある教育データを生かせる。奈良県や高知県などが既に導入している。

 【1】や【2】は導入のハードルは低い半面、自治体の事情に応じた細かな要望に全て応えられるとは限らない。これに対してパターン【3】は、「独自のデータ連携基盤やBIツール等を活用して、複数のツール・システムのデータを目的に合わせ可視化」にするシステムを構築する。例えば、データ分析基盤にマイクロソフトの「Azure」、可視化に「Power BI」を使うさいたま市、東京都渋谷区や茨城県つくば市などが、このパターンに該当する。データの利用目的に合わせたカスタマイズが可能な代わりに、開発と運用にはコストが掛かる。

本文書は3つのパターンを並列に扱っているが、実際はパターン【1】 が最も手軽な方法で、数字の順に難易度が上がる。現実問題として、一足飛びにパターン【3】を導入するのは難しいだろう。