それでもニセコは世界31位...世界の圧倒的なリゾート地とは異なる「ニセコの生存戦略」
世界中から富裕層が訪れる冬の高級リゾート地となった北海道ニセコ。外国資本の戦略や価格帯の比較などを通じて、ニセコの成功の背景を明らかにする。
ニセコは世界の高級スキーリゾートの中では比較的リーズナブルな不動産価格であり、世界の富裕層からの投資需要を引き続き集めている。
欧州アルプスや米国の立地など、地理的要因が富裕層の需要に応えることで、スキーリゾートのステータスを高め、最高水準の不動産価格を実現している。
今や世界中から富裕層がこぞって訪れる冬の高級リゾート地となった北海道ニセコ。どうやってニセコはインバウンドをものにしたのか。海外の富裕層を取り込む外国資本の戦略、日本の観光に足りていないものとは何なのか。ニセコの成功の背景を、リゾート地・富裕層ビジネス・不動産投資の知見をもつ筆者が、これらの謎をひも解く。
*『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』(高橋克英著)より抜粋してお届けする。
『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』連載第37回
『ニセコのバブルは崩壊するのか?...コロナ禍でみえた「最悪の事態」と「明るい未来」』より続く
世界トップクラスのスキーリゾート地となったニセコは、世界中の富裕層が訪れるようになった。
しかしそれでも、フランスのクーシュべル、スイスのアルプスに位置するサンモリッツ、グシュタード、米国コロラド州のベイルやアスペン、カナダのウィスラーなどの世界の高級スキーリゾートと比較すると、ニセコの不動産はまだリーズナブルな価格帯といえる。そのため、引き続き割安として世界から投資家の需要が集まることになる。
実際、英国サヴィルズの「The Ski Report」によれば、2019年10月時点の1当たりのリセール住宅価格は、クーシュベル1850がトップ、アスペンが2位、ベイルが6位、サンモリッツが7位となっている。
ニセコは、日本ではトップながら、世界では31位であり、トップのクーシュベルの半額以下の価格帯となっている。
クーシュベルの強みは、世界の中心地でもあり有数の富裕層エリアといえる、コートダジュール・モナコ、北イタリア・湖水地方、スイス、南ドイツの三角地帯に囲まれた欧州アルプスという最高の立地にあることが最大の強みだ。
この恵まれた立地のお陰で、地元フランス、イタリア、スイス、ドイツといった国の富裕層だけでなく、英国やロシアを含めた欧州全土、更に、サウジアラビアやUAE(アラブ首長国連邦)、カタールといった中東の王族や富裕層からの集客も見込める。富裕層のマーケットに圧倒的に恵まれているのだ。
これは、北米の雄であるベイルにも言える。世界最大の富裕層を抱える米国の富は圧倒的であり、かつ米国は年間5400万人がスキー場を訪れる世界最大のマーケットでもある。
こうした世界の富裕層の需要に応える形で、スキー場の規模が拡大され、ゴンドラやリフトなどの設備が整備されてきた。スパなどが充実した5つ星ホテルが誘致されミシュラン店が集まり、高級ブランド店が軒を連ねることで、更に新たなる富裕層を惹きつけるという好循環が生まれているのだ。
さまざまな条件が重なることで、スキーリゾートとしてのステータスを高め、その帰結として、世界最高水準の不動産価格をも実現している。残念ながら、このような地理的な要因は、ニセコが逆立ちしても変えることができないものだ。