ふるさと納税ルール厳格化に翻弄も3位浮上の大阪・泉佐野市 産業創出にフル活用

AI要約

総務省は2日、ふるさと納税制度による令和5年度の寄付総額が初めて1兆円を超えたと発表した。全国的に寄付額が延びる中で、175億1400万円の寄付を受け入れ全国3位となったのは、返礼品を巡り国と法廷闘争を繰り広げ、新制度から一時除外された大阪府泉佐野市だ。

泉佐野市は食肉加工事業者を誘致し、熟成肉などを寄付額の4分の1を占める返礼品の主力に育てていただけに痛手だった。だが、影響は少なく、熟成肉を手がけてきた業者は新たな商品開発に取り組み、ふるさと納税の返礼品を提供している。

泉佐野市は新事業の支援をクラウドファンディングを通じて行い、集めた寄付を新事業への補助金として利用。この取り組みは他自治体から注目を浴び、地域の活性化につながっている。

総務省は2日、ふるさと納税制度による令和5年度の寄付総額が初めて1兆円を超えたと発表した。全国的に寄付額が延びる中で、175億1400万円の寄付を受け入れ全国3位となったのは、返礼品を巡り国と法廷闘争を繰り広げ、新制度から一時除外された大阪府泉佐野市だ。5年度に実施されたさらなるルール厳格化に翻弄されながらも返礼品の開発に力を入れ、前年度から約37億円増やした。

5年10月、総務省は返礼品として熟成肉や精米を扱う場合、原材料を同一都道府県内に限るとルールを厳格化した。泉佐野市は食肉加工事業者を誘致し、熟成肉などを寄付額の4分の1を占める返礼品の主力に育てていただけに痛手だった。

だが、ルールの厳格化直前、返礼品に熟成肉を選ぶなどの駆け込みの寄付もあり、影響は少なかったという。熟成肉を手がけてきた業者はその後、ルールに抵触しない味付け肉といった調理加工品などへの切り替えを進め、今年度はふるさと納税の返礼品の提供を行っている。

元々、泉佐野市は泉州タオルの産地として知られる。しかし「泉州タオルは寄付を下支えはしているが、長く使える日用品だけに毎年のリピーターにはつながらない」(市の担当者)と悩ましい状況だった。

そこで力を注いできたのが、返礼品となる地場産品の創出だ。

「#ふるさと納税3・0」と銘打ち、新事業に挑戦しようとする事業者への支援を集めるクラウドファンディング型で寄付を募集。市は集まった寄付を寄付者が選んだ新事業への補助金として使い、返礼品の開発、生産力の増強につなげる仕組みだ。2~5年度で計61件行い、120億円の寄付を集めた。

たとえば、熟成肉を手がける業者がこのスキームを設備導入に活用。このほか、タオルの新製品の販路拡大、スイーツの生産能力強化、クラフトビール醸造所の整備など多岐にわたる地場産品開発支援につながっている。

この取り組みは他の自治体から注目され、令和4、5年度はそれぞれ60件以上の視察を受け入れた。韓国では昨年1月から、日本のふるさと納税制度をモデルにした「故郷愛寄付制」が始まり、韓国の自治体も視察に訪れたという。

市の担当者は「ふるさと納税を通じて、自治体は国民1人1人に地域をPRすることができ、さらにそれを地域活性化につなげることもできる。制度を継続、発展させていくためにも、私たちのノウハウを惜しみなく他の自治体に共有したい」と話した。