年間“35億羽”米国内で窓ガラスに衝突死…「バードストライク」対策、日本の現状は?

AI要約

鳥がガラスに衝突して死亡する問題が指摘され、アメリカでは取り組みが進んでいる。

実験によると、窓ガラスに衝突した鳥が多く即死し、死亡のリスクが高いことが示された。

日本でもバードストライクへの取り組みが必要であるが、データが不足している。

年間“35億羽”米国内で窓ガラスに衝突死…「バードストライク」対策、日本の現状は?

『ナショナルジオグラフィック』日本版サイトは、アメリカでは毎年約13億~35億羽の鳥がガラスに衝突して命を落としている可能性を指摘する論文を紹介する記事を6月10日に公開し、話題を呼んだ。

一方で、ニューヨーク市などでは、鳥の衝突死を予防するため高層ビルに「鳥にやさしい窓」の採用を義務づける条例が存在する。

はたして、日本にも、野鳥の死を防ぐための法律や条例は存在するのだろうか。

該当の論文は、ペンシルベニア州の森のはずれに鳥の餌台とガラスをはめた窓枠を設置して、鳥たちの行動を観察した実験に基づく。観察は5年間にわたり、計1200時間以上に及んだ。

窓ガラスに衝突した鳥は骨折し、脳出血を起こす可能性もある。その場では即死しなかった場合にも、意識を失っている間に外敵に捕食されることや、時間が経過してから死ぬことがある。

研究では、観察中にガラスに衝突した1300羽以上のうち約14%が即死。さらに14%が、後に死亡した可能性もあるという。

実験の結果、少なくとも180羽以上の鳥が命を落とすことになった。しかし、市街地で鳥が直面するリスクを正確に測定し、衝突死を最小限に抑えるための製品を開発するためには、今回の実験は不可欠だったと研究者は主張する。

窓ガラスや建造物などに鳥が衝突する事故は「バードストライク」と呼ばれる。特に高層ビルが並び立つ都心部で、深刻な問題となっている。

国土交通省の統計によると、空港で離着陸中の航空機に鳥が衝突する事故は、2022年に日本国内で1421件発生した。また、環境省は、国内の風力発電施設で2003年から2021年までの間に、海ワシ類のバードストライクが73件発生したと公表している。

一方、街中で起きるバードストライクに関する、日本国内のデータはない。

ただし、2011年に日本野鳥の会大阪支部の広報誌「むくどり通信」に掲載された、鳥類学者の和田岳氏のコラムによると、街中に落ちてる鳥の死体を解剖するとほとんどが頭から出血しており、窓ガラス等に衝突して死んだ可能性も考えられるという。