テレ朝の“放送事故”は企業のテレビ離れを加速させる? 「もうCMの放送枠が売れまくっているとは…」

AI要約

テレビ朝日とBS朝日で7月23日夜から24日未明にかけて、CMや番組が放送されないトラブルが発生し、広告業界に大きな影響を与える可能性がある。

テレビ朝日では、CMが放送されない障害が発生し、多くの広告が放送されず、数十本のCMが予定されている時間帯に影響を及ぼす事態となった。

これらのトラブルが広告会社と放送局の信頼関係に悪影響を及ぼす可能性があり、広告業界全体に影響を与える恐れがある。

テレ朝の“放送事故”は企業のテレビ離れを加速させる? 「もうCMの放送枠が売れまくっているとは…」

 テレビ朝日とBS朝日で7月23日夜から24日未明にかけて、CMや番組が放送されなかったトラブルは、その後も業界関係者の頭を悩ませている。広告会社の関係者は「広告会社の信頼がガタ落ちするのでは」と不安を口にする。専門家は「テレビ離れで広告費が落ちているなか、この事故は大きな打撃だ」と指摘した。

 テレビ朝日では、23日午後10時半から翌日午前0時半まで、番組の途中でCMが放送されない“放送事故”が起きた。CMが放送されない間は、都心部のビルの夜景が映され、「機械の不具合によりコマーシャルが送出できない状況となっております」とテロップが表示された。

■CM数十本、億超える金額

 また、BS朝日でもプロ野球中継が終わる午後10時すぎから、CMだけではなく、番組も放送されない事態となった。復旧した午前0時までに予定されていた5番組が放送を取りやめた。テレビ朝日の広報担当者は「現在、詳細を調査中」としている。

 他局の関係者がこう語る。

「テレビにとってCMは生命線で、放送できないというのは局にとって最も痛いこと。夜の7時~11時の時間帯は広告単価が高い。地上波のほうは、放送されていない間に数十本のCMが予定されていた。億を超えるほどのお金が絡む話だ」

 その上で、「総務省からの指摘が入る可能性が高い」と語った。

 放送法によると、今回のような事態は「重大な事故」と位置付けられ、放送局が理由を総務省に報告しなければならない。施行規則に「設備に起因する放送の停止その他の重大な事故であって、総務省令で定めるものが生じたときは、その旨をその理由または原因とともに、遅滞なく、総務大臣に報告しなければならない」と定められているからだ。

 広告会社の関係者は、

「CMを担当する広告会社と放送局の関係性が悪くなるのでは」

 と危惧する。CMの放送枠について何かトラブルがあった際は、まずは広告会社が対応するというのが一般的だといい、CMが流れないなどのケースでは、CMのスポンサー企業から広告会社にクレームが入ることがほとんどだという。

「スポンサー企業の広告会社に対する信頼が落ちる可能性があります。その責任をどう取るのか、という話も今後出てくるのではないでしょうか」(前出・広告会社関係者)

■スポンサー離れのきっかけにも

 広告が既存メディアから離れていると言われて久しいが、実際に広告市場の変化は大きい。

 広告大手「電通」が毎年公開している「国内広告費調査結果」では、2019年に地上波テレビの広告費1兆7345億円をインターネットが初めて上回り、2兆1048億円(前年比119.7%)となった。21年には、ネット広告は2兆7052億円(同121.4%)で、マスコミ4媒体(テレビ・新聞・ラジオ・雑誌)の計2兆4538億円を超えた。

 広告など情報通信産業に詳しい福井誠・武庫川女子大教授(経営学)は、

「テレビ離れが進むなか、昔みたいにCMの放送枠が売れまくっているとは言えない。そのなかで、CMを流せないなどの事故は、スポンサーがテレビ業界から離れるきっかけになる可能性がある」

 と話している。

(AERA dot.編集部・板垣聡旨)