「海岸のサザエを拾ってBBQ」は罰金100万円…夏の海の「うっかり密漁」で検挙者数が増えているワケ

AI要約

密漁の標的が漁業者から一般人へとシフトし、密漁関連の検挙数の大部分を漁業者以外が占めるようになっている。海での魚介類の持ち去りも注意が必要であり、罰金が科せられる可能性がある。

密漁は撲滅が難しく、暴力団関係者から一般人にも広がっており、高額な魚介類の流通量の半分が密漁の可能性があると指摘されている。

かつては漁業者が主に密漁を行っていたが、環境保護意識の高まりや漁獲量の減少により、一般人が漁業者を上回る検挙数を記録している。

かつて密漁といえば海のプロである漁業関係者による犯行が大半だった。だが今、検挙数の9割近くを漁業者以外が占めるようになっている。時事通信社水産部の川本大吾部長は「一般人が海辺に落ちている魚介類を持ち去るのも密漁にあたる。場合によっては高額の罰金を科されるため、注意が必要だ」という――。

■密漁は実態がつかみにくく撲滅が難しい

 夏本番を迎え、海のレジャーは最盛期を迎えている。海水浴や磯遊び、釣りなどのほか、浜辺でバーベキューを楽しむ機会も増えそうだが、海辺で偶然、魚介を目の当たりにしても、持ち去るには注意が必要となる。場合にはよっては「密漁」の疑いがかけられ、予想外の重い罰則が待っていることもあるからだ。

 密漁といえば、暴力団関係者が暗闇の海中、アワビなどの高級貝類をごっそり持ち去って売りさばき、組織の資金源になっていることが問題視されてきた。密漁者が反社会的勢力と無関係であっても、転売先がそうである場合があるほか、密漁された水産物をさばくのがアンダーグラウンドの組織だったりするなど、実態がつかみにくく、密漁を撲滅するのはなかなか難しいのが現状という。

■高価な魚介類は流通量の半数が密漁の可能性も

 かつて旧築地市場(東京都中央区)では、密漁アワビの流通を食い止めるべく、市場取引を拒否しようという試みが検討された。悪質な密漁が頻発していた宮城県では15年ほど前、被害が数十億円に上ったとみられ、築地の競り人が密漁の疑いがあるアワビを販売したとして、宮城県警に書類送検されたことがあったのだ。

 全国的にみると、魚価が高いアワビやナマコ、サザエ、イセエビ、ウナギなどが密漁対象の代表種。種類によっては「国内に流通する量の半分近くが、密漁によるものではないか」と指摘する声もある。

 警察や関係組織の取り締まりに対し「いたちごっこ」が続いており、今でも全国各地で密漁は発生している。組織的で悪質・巧妙な不法行為は後を絶たないが、密漁を巡る現状は今、大きく変化している。

■かつては漁師のルール破りが主流

 水産庁のまとめによると、都道府県や海上保安庁、警察による2022年の海での関係法令違反による検挙件数(速報値)は、前年比16%増の1527件。2021年まで数年間は減少傾向を示していたが、2022年に再び増加に転じ、比較的高い水準となった。もちろん検挙数は氷山の一角で、その何倍もの密漁が行われている可能性が高いが、それなりの傾向は見て取れる。

 2000年代の初めまで、検挙者の圧倒的多数が「漁業者」であった。海や漁業管理ルールを熟知した漁師が、故意に規制を破ったとみられる結果であった。ところが2006年には「漁業者以外」の検挙者が上回るようになり、その後は、漁業者の検挙数が減少する中で、一般の検挙数が増加傾向となっている。2022年には一般の検挙数が実に9割近くを占めた。この逆転現象はなぜ起こったのか。

 水産庁は、「世界的な環境保護意識が高まる中で、日本周辺の漁獲量も減少し続けているため、漁業者の資源管理に対するルール遵守の姿勢が浸透してきた結果ではないか」とみる。漁業者とは対照的に、一般の人は魚介の扱いに関する認識が低いことが、検挙数増の要因となっているようだ。