財政黒字化、予断許さず 景気対策終了が前提 諮問会議

AI要約

政府が2025年度の「財政黒字化」シナリオを示し、景気対策の必要性が今後減少することを前提としている。

しかし、物価高や中小企業・家計の圧迫などの課題が続き、景気対策と財政収支のバランスが懸念される。

政府は景気の腰折れを回避しつつ、財政拡張と抑制の綱渡り状況に直面している。

 政府が29日に示した2025年度の「財政黒字化」シナリオは、ガソリン補助金などコロナ禍以降に実施した景気対策が今後は必要なくなることが前提だ。

 しかし、歴史的な物価高は終わりが見えず、中小企業の収益や家計は圧迫されたまま。景気の下支えを優先して財政出動を続ければ、黒字化は絵に描いた餅に終わりかねない。

 岸田文雄首相は6月、今秋に経済対策を策定し、年金受給世帯などを対象にした給付金を検討する意向を表明した。対策の裏付けとなる補正予算の執行が来年4月以降にずれ込んだ場合、25年度の歳出が膨らんで基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)は悪化する。

 今年の春闘で大幅な賃上げが実現したものの、物価の上昇ペースには追い付かず、実質賃金は前年割れが続く。9月に想定される自民党総裁選や、次期衆院選をにらんで与党の歳出圧力が一段と強まれば、今回の試算に織り込んだ歳出効率化による約7000億円の収支改善効果が吹き飛ぶ恐れもある。

 これまでもリーマン・ショックやコロナ禍と、景気に急ブレーキがかかるたびに景気対策と税収減が相まってPBの赤字は拡大。黒字転換は真夏の逃げ水のように遠のき、財政健全化の入り口にすら立てない状況が続いてきた。政府の経済財政運営は景気の腰折れを回避しつつ、財政の拡張も抑えなければならない綱渡りの状態が続く。