飲み水の規制「据え置き」に。根拠はなぜか8年前の海外のデータ…世界から取り残される日本の実態とは

AI要約

日本の飲み水安全に関する問題を取り上げた記事。

PFASによる水質基準の見直しについての専門家会議での議論を紹介。

海外の規制と比較して日本の安全基準の現状を考察。

飲み水の規制「据え置き」に。根拠はなぜか8年前の海外のデータ…世界から取り残される日本の実態とは

「日本では、水と安全はタダ」。そう語られていた時代ははるか遠い。水の安全がいま、揺らいでいる。

7月17日、飲み水に含まれるPFASの管理をめぐり、環境省のもとにある「水質基準逐次改正検討会」と「PFOS・PFOAに係る水質の目標値等の専門家会議」が合同で会議を開き、計15人の専門家が出席した。

飲み水の目標値は2020年に初めて設けられたとき、健康影響についての評価が定まっていないとして「暫定」とされてきた。それから4年。ようやく見直しが議題に上ったのだ。

数値をいくつにすべきか。

「予防原則に基づいて、より安全側にみるべき」

「健康影響について不確実性が高いことを考慮すべき」

そういった指摘が出たものの、具体的な提案には至らない。

食品安全委員会は、一日に体内に取り込んでも健康への影響がない「耐容一日摂取量(許容摂取量)」を6月に示した。これに基づいて、いまと同じ「PFOSとPFOAの合計 50ナノグラム」が妥当とする意見に賛同が集まった。

ただ、海外に目を向けると、規制の波ははるか先をいっている。

アメリカのEPA(環境保護庁)は今年4月、「PFOS 4ナノグラム、PFOA 4ナノグラム」を規制値とした。合計で70ナノグラムから大幅に引き下げた。当初は事実上ゼロにすべきとの指摘があったが、浄水場にある検査機器で調べられる下限値に合わせた。

また、すでに製造・使用が禁じられているPFOSやPFOAに代わって使われるPFHxS、PFNA、PFBN、GenXについても「10ナノグラム」などとした。

こうした規制によって、「何千人もの死を防ぎ、何万人もが深刻な病気になるのを減らし、1億人が汚染に曝露するのを減らす」としている。

世界では、規制を厳しくするだけでなく、対象とする物質が広がっているのも特徴だ。

たとえば、ドイツは「4物質の合計で20ナノグラム」または「20物質の合計で100ナノグラム」。カナダは「総PFASで30ナノグラム」を示している。

もはや、一つひとつの物質の毒性が確認されるのを待っていては安全を確保できないとの判断から、物質ごとではなく、グループとしてPFASを封じようというのだ。

環境意識の高い北欧ではさらに厳しい。PFOS、PFOA、PFHxS、PFNAの4物質について、スウェーデンが「合計4ナノグラム」、デンマークは「合計2ナノグラム」としている。

EUでは、「PFASの禁止を遅らせることは、健康や環境への影響にかかわるコスト負担を将来世代に転嫁することになる」と考えられているからだろう。