【プレイバック’04】日朝両政府の思惑でインドネシアに〝宙ぶらりん〟放置された曽我ひとみさん一家

AI要約

"04年7月9日、日本に帰国してきた拉致被害者の曽我ひとみさんが夫と2人の娘と再会し、感動のシーンが世界中を涙で包んだ。

一家再会の裏には日朝両政府の思惑があり、小泉首相の参議院選挙前のサプライズと、金正日総書記の経済支援要請が絡んでいた。

ジェンキンスさんの日本での不名誉除隊や禁錮刑、そして日本での余生や曽我さんの活動についても述べられている。

【プレイバック’04】日朝両政府の思惑でインドネシアに〝宙ぶらりん〟放置された曽我ひとみさん一家

10年前、20年前、30年前に『FRIDAY』は何を報じていたのか。当時話題になったトピックをいまふたたび振り返る【プレイバック・フライデー】。今回は20年前の’04年7月30日号掲載の「曽我ひとみさん『一家再会』は小泉首相へのプレゼントだった」をお届けする。

’04年7月9日、’02年に日本に帰国してから北朝鮮に残した家族と離れ離れになっていた拉致被害者の曽我ひとみさん(当時45)はインドネシアのジャカルタで夫のジェンキンスさん(当時64)と2人の娘と再会を果たす。ジェンキンスさんに飛びつき熱烈なキスをする曽我さんの姿は世界中の人の涙を誘った。だが、この「涙の再会」の裏には日朝両政府の〝思惑〟があった──(以下《 》内の記述は過去記事より引用)。

◆「参院選前に〝サプライズ〟が必要だった」

《「小泉政権は参議院選挙前に勝利の決め手となるような〝サプライズ〟が欲しかった。一方、北朝鮮は一刻も早い日本からの経済援助を求めていた。当初、難しいとされていた一家の早期再会が、急転直下、選挙直前に実現したのは、両国の思惑がピタリと一致したからです」

北朝鮮情勢に詳しい外務省幹部はこう語る。》

日本側の要請を受けてジェンキンスさんらが平壌から出国する映像を生中継するなど、破格の対応ぶりを見せた北朝鮮。その協力的な姿勢のウラには悪化の一途をたどる国内の経済事情があった。

《「あらゆる物資や権利を軍優先に配分する〝先軍政治〟が崩壊してしまったんです。現在、北では軍人の家族まで飢える状態。これまでは考えられないことでした。軍からの支持も弱くなっている金正日にとって日本からの経済援助の必要性はますます高まっています。

しかし、小泉首相がコケたら、次の政権とのコネクションを再度築かなければいけない。が、いまの北朝鮮にはその時間すら残されていない。だから、日本のマスコミによる 『自民、参院選危うし』の報道が始まるや、大急ぎで再会時期をセッティングしたのです」(前出・外務省幹部)》

つまり、一家再会は小泉政権の延命によって自らの地位の安定を図りたい金正日総書記からのプレゼントだったというのだ。北朝鮮はさらによど号ハイジャック犯の帰国や、横田めぐみさんら拉致被害者10人の安否情報などのプレゼントを用意しているという。現在〝宙ぶらりん〟の状態にあるジェンキンスさんらには関心がなく、北へ戻す意志もないようなのだ。

そうなると、曽我さんが一家で日本に住めるかどうかは、米軍の〝逃亡兵〟であるジェンキンスさんの訴追問題だけがカギとなる。政府は全力で米政府と交渉してこの問題に取り組むべきなのだが、参院選後の官邸からは「あとは家族に相談して決めてもらう」という他人事のような言葉ばかりが返ってくるのだった。その理由を自民党関係者は次のように語った。

《「そもそも、小泉首相の一番の目的は、 参院選前に曽我さん一家を再会させること。その後のことは、何も考えていなかった。政府の言葉は、要するに『何もしない』ってこと。参院選も負けちゃったし、ジェンキンス氏の訴追免除も、アメリカとの軋轢は避けたいから、打つ手ナシの状態だよ」》

現在、曽我さん一家はジャカルタ市内の最高級ホテルのスイートルームで、外界の雑音を一切シャットアウトし、一家団欒のときを過ごしている。》

ジェンキンスさんはジャカルタで曽我さんに会うまでは日本に来ることを決心しかねていた。だが、このジャカルタでの曽我さんの説得により、一家で日本に住むことを決めたという。だが、米政府の、ジェンキンスさんが脱走兵として訴追される立場であるという米政府の姿勢は一貫して変わらず、もし日本に来れば米軍に引き渡さなければならない可能性があった。結局ジェンキンスさんは「病気の治療のため」という名目で18日に曽我さんや娘たちとともに来日した。

’04年11月、ジェンキンスさんは日本で軍法会議にかけられ、不名誉除隊と禁錮30日の判決を受ける。釈放後の’05年以降、’17年12月に亡くなるまで曽我さんの故郷である佐渡で余生を送った。佐渡の福祉施設で働いていた曽我さんは今年4月から佐渡市役所拉致被害者対策係へ異動。一緒に拉致されて行方不明のままの母・ミヨシさんや、未だに帰国できない拉致被害者のために活動している。