息子の命を奪った男へ母親が伝えたい本当の思い 伝達制度開始半年、書面方式のもどかしさ

AI要約

心情伝達制度が半年経過した。被害者や遺族の感情を加害者に伝える取り組み。実際のケースや反応を通じて、制度の意義と課題が浮かび上がっている。

懲役14年の実刑を受けた男による残忍な事件。被害者側の視点からの証言と、加害者への思い。遺族が加害者に向き合う苦悩と希望。

事件の背景や加害者の態度、被害者通知制度からの情報不足。被害者や遺族が直面する葛藤と真実への向き合い方。

息子の命を奪った男へ母親が伝えたい本当の思い 伝達制度開始半年、書面方式のもどかしさ

事件や事故の被害者や遺族が、刑務所や少年院にいる加害者に気持ちを伝える「心情伝達制度」が昨年12月に始まり、半年が経過した。刑務官らが被害者や遺族の心情を口頭で聞き取り、内容を書面にまとめて加害者の面前で読み上げる。被害者側が希望すれば、加害者の反応などを書面でフィードバックする。加害者に反省と更生を促すことが目的だが、制度の課題も浮かんでいる。

■懲役14年の実刑言い渡された男

「想像ですけど、加害者は誠実に答えてくれたとは思う」。14年前に長男の圭祐さん=当時(19)=の命を奪われた母の釜谷美佳さん(58)は、制度を利用した感想をこう話した。長らく抱き続けてきた疑問や思いを伝えたところ、加害者の男(36)からは返信が届いた。

圭祐さんは体を動かすのが大好きで、野球やサッカーに熱中していた。母の日には毎年欠かさずチョコレートをプレゼントしてくれた。怖がりだけど、母親思いの優しい性格。かわいくて仕方がなかった。

だが平成22年10月29日未明、圭祐さんは神戸市須磨区の路上で男らから頭や顔に殴る蹴るの暴行を受け、死亡した。

圭祐さんが搬送された病院の集中治療室(ICU)で対面したときの光景は、今も目に焼き付いて離れない。その顔は、まるで別人のように腫れ上がっていた。

当時22歳だった主犯格の男は、圭祐さんと友人が男の妹を連れ回していると思い込み、激高。仲間を集め、長時間にわたって執拗(しつよう)に圭祐さんらに暴行を加えたという。圭祐さんは顔が判別できないほど殴打され、その日のうちに亡くなった。

神戸地裁は平成25年2月、傷害致死罪などに問われた男に求刑通り懲役14年の実刑判決を言い渡した。釜谷さんが目にした公判での男の態度からは、反省の色はうかがえなかった。

■「まじめにやっていこうと思っている」

男の服役後は半年に1度、通知書が届く。刑事事件の被害者らに加害者の処分結果を通知する「被害者通知制度」に基づいたものだが、記されているのは日常的な態度や懲罰の結果のみ。無機質な文字の羅列から得られる情報は、ほんのわずかだった。

男が塀の中で何を思っているのかは全く分からない。反省しているとも思えない。そもそも、愛する長男の命を奪った男について「進んで知りたくはない」。一方で、「向き合わなければならない」とも感じていた。