ルイ・ヴィトンも注目「ジャパン・デニム」の知られざる世界。職人1人が年中無休で作る「藍色」

AI要約

児島は世界的ジーンズ生産地で、ジーンズストリートには48店舗のブランドが軒を連ねる。

MOMOTARO JEANSは日本の藍染技術を活かし、世界展開を果たしている。

染色職人岡本好春さんは、特濃-TOKUNO BLUE-を作るために20年以上藍染を続けている。

ルイ・ヴィトンも注目「ジャパン・デニム」の知られざる世界。職人1人が年中無休で作る「藍色」

瀬戸内海に面する岡山県・児島。

ここは、ジーンズメーカーや関連工場が拠点を構える、世界的ジーンズの生産地だ。

ジーンズがアーケードのように吊り下げられた「ジーンズストリート」と呼ばれるエリアには、地元のブランド約48店舗が軒を連ねる。

児島生まれの「MOMOTARO JEANS」もその一つだ。26の国と地域に展開し、小売売上の4割を外国人購入者が占めるなど、今や国内の知名度を凌駕する勢いだ。

世界に誇るジーンズづくりの全貌を見ていこう。

ビニールハウスの中に入ると、大きなバケツの中に、マグマのような青い液体が浸かっている。

ここで、デニムが1枚の布となる前の“糸”を染める工程がおこなわれる。 

世界で流通するデニムは、合成インディゴで染色されることがほとんどだ。一方、MOMOTARO JEANSでは日本古来の技術である藍染によって、限りなく黒に近い藍「特濃-TOKUNO BLUE-」を表現する技術を持つ。

岡本好春さんは、染色職人として約20年間、休むことなくこの藍色を守り続けてきた。藍染とは、いわゆる草木染めのような「煮出して染め上げる」染色方法ではない。

原料となるタデアイに含まれるインディゴは、そのままでは水に溶けない性質を持つ。そこで、美しい青を表現するために、2回に渡る発酵のプロセスが必要となるのだ。

第1段階の発酵は、すくもと呼ばれる染料のもとを作る過程だ。タデアイの葉を細かく刻んだものをむしろ(藁などで編んだ敷物)の下で約100日間発酵させると、黒い堆肥のようなものが出来る。

その後、岡本さんの手によって第2段階の発酵に入る。 すくもに灰汁を加え、ドラム缶ほどの大きなバケツで夏は約2週間、冬は約1カ月かけて発酵させていく。岡本さんは、その感触や匂いだけで、染液の状態を把握できるという。

こうして出来上がった染液に、糸を輪っかにした「かせ」の状態で、浸けて出すのを繰り返していく。

数回染めると、深い藍色に変わる。真っ青な岡本さんの手だが、一度染まってしまうとなかなか落ちないこともあり、普段は手袋で作業しているそうだ。

色ブレのないように丁寧に染められた糸は、水で洗い流すことで、より一層鮮やかな色味を増していく。

岡本さんの言葉を借りれば、藍は「生き物」だ。液の割合や気温などいくら条件が揃えど、上手く染まらないこともあるという。