国内最古の鉄筋コンクリート製公営住宅で「昭和にタイムスリップ」…長崎市「旧魚の町団地」交流施設に

AI要約

長崎市中心部に立地する最古の鉄筋コンクリート製公営住宅「旧魚の町団地」が再生の見直しを受けている。

建て替えや改修を経て、地域の交流施設として活用される予定で、歴史や文化を伝える象徴的な存在となることが期待されている。

公営住宅の歴史や役割の変化、活用方法の工夫などが注目されている。

入居者がなくなり老朽化した旧魚の町団地は、解体案もあったが、保存や活用を求める声が高まり、改修を経て再生する方針に転換した。

改修プロジェクトには地域のまちづくりを目指す事業者が参加し、宿泊施設や子ども食堂、イベントスペースなどの施設整備が提案されている。

戦後の公営住宅の歴史や役割、建設背景などが踏まえられ、長崎市のような戦災地を中心に設置された公営住宅の再生プロジェクトが全国で広がりつつある。

公営住宅の多様な活用方法や再生事業の展開が注目されている。

 空室が増えた公営住宅を地域の交流施設として再生させたり、高齢者や子育て世帯が利用しやすいように工夫したりして、有効活用しようという動きが広がっている。戦後、住宅不足を解消するために各地で建設された集合住宅。一斉に老朽化を迎える中、建て替えや改修に合わせた再生事業を経て、その役割も多様化している。(林航)

 「昭和にタイムスリップしたみたい」「映画のワンシーンに使えそう」

 長崎市中心部に立地し、国内に現存する最古の鉄筋コンクリート製公営住宅の一つ「旧魚の町団地」。6月に開かれた見学会では、築75年が経過した建物の居室にちゃぶ台やテレビが用意され、50人ほどの参加者は往時の暮らしに思いを巡らせた。

 旧魚の町団地は1949年に建設された4階建ての県営住宅(24戸)だ。老朽化を理由に2019年以降は入居者がなく、現在は使われていない。

 長崎県は当初、解体を検討していたが、終戦直後に建てられた集合住宅の工法や文化的価値に注目する専門家らから、保存や活用を求める声が高まった。県は耐震性に問題がないことを確認した上で、改修して活用する方針に転換した。

 団地の改修と運営を担う事業者に選ばれたのは、長崎市出身の伊東優さん(37)が代表を務める山形県の建築設計事務所「ツキノワ合同会社」。伊東さんは地域のまちづくりの拠点とすることを目指して宿泊施設や子ども食堂、イベントスペース、共有オフィスなどの整備を提案し、利用を希望する人向けの見学会も開いた。

 年度内には入居が始まる予定で、伊東さんは「歴史や文化が入り交じった長崎を象徴する施設。色々な人のつながりを生み出せる場所をつくり出していきたい」と話している。

 戦後、「燃えない家」をうたう鉄筋コンクリート製の公営住宅が建設されたのは、戦時中に原爆や空襲などの被害を受けた広島市や長崎市、山口県下関市などの市街地だった。

 1960年代以降になると、高度経済成長期の人口増加や住宅不足を背景に、都道府県や市町村が低所得者向けの住宅として次々に整備し、全国で急増していく。ただ、民間のマンションなどが供給されていく中で、公営住宅の入居者は徐々に減っていった。