情報源を強制捜査で特定…現在も、17年前も 問題の書『僕はパパを殺すことに決めた』著者「私が逮捕起訴されるべきだった」【さまよう信念】

AI要約

元県警幹部が不祥事隠ぺいを訴え、メディアへの取材協力行為が問題化。

17年前に起きた奈良の放火事件を題材に、情報源の特定と取材者の倫理規範について問題が発生。

著者と情報源が逮捕や非難を受けるなか、メディアの取材手法に対する厳しい目が向けられる。

情報源を強制捜査で特定…現在も、17年前も 問題の書『僕はパパを殺すことに決めた』著者「私が逮捕起訴されるべきだった」【さまよう信念】

いま鹿児島県警に注目が集まっている。法廷で県警トップによる不祥事隠ぺいを訴えた元県警幹部。彼のメディアへの取材協力行為は、違法な「秘密漏えい」か、それとも、正当な「内部告発」か。

情報源が元県警幹部であることは、メディアに対する強制捜査で特定されたこともメディアの取材源を秘匿する権利を侵害しているとの指摘もある。これは目新しい問題ではない。17年前にも奈良を舞台に起きていた。

2006年に母子3人が亡くなった放火事件。放火したのは16歳の長男だった。 この事件が起きた背景に迫った1冊の本『僕はパパを殺すことに決めた』が物議を醸す。

この本には長男の少年審判の供述調書が多数引用されていたことから、法務省が問題視。奈良地検が、著者の草薙厚子さんの自宅等に異例の強制捜査に入る。

そして、調書の入手先が審判で長男の精神鑑定を担当した崎濱盛三医師であったと特定。崎濱医師は秘密漏示罪で逮捕起訴された。

一方、著者の草薙さんは、検察から19回取り調べを受けるも、不起訴(嫌疑不十分)となる。 情報源だけが罪に問われる形となった。

取材の情報源である人が誰であるか特定される情報を漏らさないことは、取材者にとって最も守るべき倫理規範とされる。強制捜査で情報源が特定され、情報源だけが立件されることは、取材者にとってはもっとも屈辱的な状況と言える。

著者の草薙さんに17年前の気持ちを尋ねた。

草薙厚子さん:気持ちが真っ暗でしたね。崎濱先生じゃなくて、私になってほしかった。私が逮捕起訴されるべきだったんじゃないかってずっと思っていました。本当にすまない気持ちでいっぱいでしたね。謝罪をしたいと弁護士を通じて申し入れていましたが、返事はもらえませんでした。本当は一緒に裁判を戦いたかった。

情報源を守れなかった草薙さんは強い批判に晒された。講談社の調査委員会の報告(2008年4月)は、崎濱医師に出版を事前に知らせていなかったこと等、取材手法に大きな問題があったことを指摘。ますますメディアは草薙さんに厳しい目を向けていくことになった。