空自情報流出、国防の脅威招く「承認欲求」 SNSのディスコード、米軍でも昨年機密漏洩

AI要約

航空自衛隊内でディスコードを通じたミサイルの未公開情報流出が疑われる事案が浮上。米軍での同様の事件を経て、軍事機密文書の画像まで流出した可能性が指摘されている。

20代兵士が逮捕された米国の事件やその経緯を踏まえ、内部関係者が情報を漏らした可能性が浮上。承認欲求が国防上の脅威につながる事態となっている。

日本でもSNS上での情報漏洩問題が顕在化し、自衛隊内での情報流出によるリスクが指摘されている。セキュリティに関する教育と適切な処分が必要とされている。

空自情報流出、国防の脅威招く「承認欲求」 SNSのディスコード、米軍でも昨年機密漏洩

航空自衛隊の内部関係者が交流サイト(SNS)アプリ「ディスコード」にミサイルの未公開情報を流出させた疑いが浮上した。ディスコードへの漏洩(ろうえい)は昨年、米軍で明らかとなり、20代の兵士が逮捕された。兵士の投稿内容は次第にエスカレートし、機密資料の画像データまでアップされたという。デジタル空間で地位を確立したいとの承認欲求が国防上の脅威に転化したとみられるが、もはや自衛隊もひとごとではない状況だ。

米国で昨年4月、ウクライナ戦争や同盟国に関する機密情報がSNS上で大量に拡散していることが明らかとなり、米連邦捜査局(FBI)が、米東部マサチューセッツ州の州兵空軍に所属の20代兵士を逮捕した。空軍内での階級は1等空兵に過ぎなかったが、IT業務に関する知識などが認められ、機密文書の取り扱いが可能な資格(セキュリティー・クリアランス)を取得していた。

現地報道によると、漏洩は2022年後半からディスコード上で始まった。「OG」のハンドルネームを用い、20~30人のコミュニティーに軍で知り得た情報を文章で投稿していたという。

ただ、他のメンバーの反応が思ったよりも薄かったため、関心を引くために機密文書を撮影した画像データを投稿。ウクライナ戦争関連▽韓国政府内部のやり取り▽中国の兵器開発関連-など多岐にわたり、別のSNSやネット掲示板などに転載され、拡散した。

同じコミュニティーにいたあるメンバーは米ワシントン・ポスト紙の取材に対し、兵士には「友人に自慢したい気持ち」があったと語っている。

今回、空自関係者が参加したとみられるディスコード上のやり取りを産経新聞が確認したところ、装備品の性能や構造といった関心事に対し、空自関係者を名乗る人物が、根拠を示して答えるという形でのやり取りが目立った。根拠を示す際には「内部」や「機密」、「ガチ機密」といった文言を添えていた。

空自内部からディスコード上への情報流出問題は、防衛省側による調査が続く。流出の動機は判然としないが、ネット空間上での個人の承認欲求は、米国だけでなく日本においても国防上の脅威となり得る。

軍事情報のセキュリティー問題に詳しい日本大危機管理学部の福田充教授(インテリジェンス)は「SNSの普及が情報環境の変化をもたらし、漏洩のハードルを下げてしまった。安易な書き込みが懲戒事由や法令違反に当たることを徹底教育し、場合によっては重い処分を科すことも必要だ」と話している。(木津悠介)