旧統一教会の念書は「元信者が合理的な判断できないことを利用」、最高裁が無効と判断

AI要約

元統一教会信者の違法な勧誘と献金に関する訴訟で、最高裁が念書の無効を判断。教団に対する損害賠償請求が再審されることになった。

念書は合意が公序良俗に反しており、無効とされた。教団による献金勧誘の違法性を初めて示す判決となった。

高齢で認知症の元信者が教団の影響下で献金し、合理的な判断ができない状況で念書を署名したことが問題視された。

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の元信者(故人)が違法な勧誘で献金させられたとして、元信者の長女が教団側に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(堺徹裁判長)は11日、元信者が署名した「教団に返金を求める裁判を起こさない」とする念書について、「公序良俗に反し、無効」と判断した。最高裁が教団の献金について判決を出すのは初めてで、同様の訴訟に影響を与えることになる。

 5人の裁判官全員一致の意見。同小法廷は、「念書は有効」として原告側の請求を退けた1審・東京地裁判決と2審・東京高裁判決を破棄し、献金勧誘行為の違法性や教団の責任の有無を検討させるため、審理を同高裁に差し戻した。

 判決によると、元信者の女性(2021年に91歳で死亡)は2005~10年、夫名義の金融資産を解約したり、土地を売却したりするなどして教団に1億円超を献金した。86歳だった15年11月、公証役場で「返金や損害賠償を求める裁判を一切起こさない」との念書に署名・押印したが、約7か月後に認知症と診断された。

 同小法廷はまず、念書の有効性について、「提訴しない」との合意は憲法で保障された「裁判を受ける権利」を制約することから「慎重に判断すべきだ」と指摘した。その上で、年齢などの属性や相手との関係、合意に至った経緯、当事者が被る不利益の程度などを総合的に考慮し、「合意が公序良俗に反する場合には、無効となる」との判断枠組みを初めて示した。

 今回のケースでは、元信者が長年、教団の心理的な影響下にあり、高齢で念書署名の約7か月後に認知症と診断されたことや、念書の締結が教団信者の主導で進んだ経緯を踏まえ、「元信者が合理的な判断をできないことを利用して、一方的に大きな不利益を与えた」と述べ、念書を無効とした。

 同小法廷は、宗教団体による献金勧誘行為について違法性を判断する基準も初めて提示した。勧誘の言動のほか、寄付者の属性や家庭環境、資産状況、献金の目的や額などを多角的に検討し、社会通念上相当でない場合は違法となるとした。