強盗「失敗」の責任5000万 「自分が死ぬか、家族さらわれる」銀座での強盗へ

AI要約

19歳の無職男が岐阜県大垣市の民家と東京・銀座の高級時計店で起こした強盗事件に関する裁判で、懲役10年の判決が言い渡された。

男は仲間と共謀し、2つの事件で暴行や脅迫を行い、総額3億円以上にのぼる金品を奪った。

男はSNSを通じて匿名の人物と連絡を取り、事件に巻き込まれたが、裁判では責任を認めつつも、自ら招いたとする判断が下された。

 昨年5月に岐阜県大垣市の民家と東京・銀座の高級時計店で発生した強盗事件で、強盗致傷罪などに問われた当時19歳の無職男(20)の裁判員裁判で、岐阜地裁(村瀬賢裕裁判長)は10日、懲役10年(求刑・懲役13年)の判決を言い渡した。SNSで「友人」とやり取りし、氏名不詳とされる人物から指示を受けるなど、「匿名流動型」と言われる犯罪の全容解明の難しさが浮き彫りになった。

 判決によると、男は仲間と共謀し、昨年5月2日、大垣市内の会社役員男性(76)方に侵入。暴行を加えてけがを負わせ、現金約2200万円入りの金庫などを奪った。同8日には銀座の時計店で店員に刃物を突き付けて脅し、バールを使ってショーケースを次々と破壊。高級腕時計などを奪い、被害は74点、販売価格で計約3億円に上った。

 大垣の事件は、男が勧誘した実行役が、奪った現金を持ち逃げした。男は「失敗」の責任を問われ、暴力団関係を名乗る人物から5000万円を要求されていた。公判では「強い口調でまくし立てられ、反論できなかった。最悪自分が死ぬか、家族がさらわれる心配があった」と弁明した。

 続く銀座の事件は、氏名不詳の人物に時計店で金品を奪う案件があるとSNSで持ちかけられ、金を支払えないでいた男が応じた。しかし、男はかかわった時点で成功するとは「思っていなかった」という。

 覆面を用意するなどしたが、狙う店を直前に変え、逃走方法もほとんど練っていなかった。時計店での犯行後、東京・赤坂のマンションのベランダに侵入した容疑で逮捕された。

 弁護側は「関係者から脅されるなど、望んで事件に加わったわけではない」と主張したが、村瀬裁判長は「そもそも(大垣の)事件に加わったことで自ら招いた事態であり、量刑上大きく酌むことはできない」と判断した。

 SNSを通じて集められた若者らによる強盗などの犯罪は「匿名流動型」と呼ばれ、各地で発生している。

 大垣の事件は、「北斗」を名乗る人物から「岐阜で空き巣の案件があり、実行犯を手配すれば報酬が出る」という情報を伝えられ、男が知人を勧誘した。

 被告人質問で、男は「北斗」とは砕けた言葉遣いでSNSでやり取りし、食事をしたり、遊んだりする「友人関係」と認めた。一方、本名や年齢は「言いたくない」と証言を拒んだ。「『北斗』が捕まることになったら、大垣事件の実行役のようなけがではすまない」と説明。大垣の事件で逃げた実行役2人が、頼ろうとした知人に暴力を受けたことを挙げた。

 男は初公判から長髪を後ろで一つに束ねていたが、論告で丸刈りになって法廷に現れた。被告人質問では両事件を振り返り、「悪いことでお金を稼ぐことは絶対しない」と反省を口にしていた。この日、白のワイシャツ姿で裁判長を見つめ、判決を聞いていた。