岸田文雄首相、自民党の選挙情勢調査で“落選の可能性”の分析 有力候補との一騎打ちの構図になれば「1区現象」がお膝元「広島1区」でも起きるか

AI要約

総理大臣の解散権を行使できなかった岸田首相に対し、自民党内から次々と「ポスト岸田」の名乗りが上がる状況。

広島1区での逆風選挙や公明の支持難により、岸田首相の落選可能性が浮上。

選挙分析者の指摘から、岸田首相の現状と有力対立候補の出現による危機について検証。

岸田文雄首相、自民党の選挙情勢調査で“落選の可能性”の分析 有力候補との一騎打ちの構図になれば「1区現象」がお膝元「広島1区」でも起きるか

 現職総理に遠慮するそぶりもなく自民党内から次々と「ポスト岸田」に名乗りを挙げる現状は、総理大臣の専権事項である「伝家の宝刀」衆議院の解散権を岸田文雄・首相が行使できなかったことに端を発する。それもそのはず、有権者の深刻な自民党離れは、総理の地元・広島1区にまで及んでいた──。【全3回の第1回】

 さる6月27日、東京・千代田区のホテルニューオータニで行なわれた自民党の1区選出議員でつくる「1区の会」の会合で岸田首相はこう語った。

「1区は無党派層が多く選挙で党のイメージが影響しやすい。みなさんには苦労をかけているが、全員当選できるように力を合わせて頑張っていきたい」

 自民党逆風下の総選挙では、無党派層が多い都市部で劣勢に立たされる。とくに各都道府県の県庁所在地を選挙区に含む1区で自民党議員が軒並み野党に敗れる「1区現象」が知られている。4月の衆院補選でも、裏金問題批判により自民党が議席を守り続けてきた島根1区で野党に議席を奪われ、1区の会メンバーは危機感を強めている。

 そうしたなかにあって広島1区選出の岸田首相は初当選以来、逆風選挙でも大差で10回連続当選を続けるほど選挙に強い。

 だが、その岸田首相が肝を冷やした情報がある。

 自民党選対関係者の話。

「4月の衆院補選全敗を受けて党本部は5月に入って内々に全国的な選挙情勢調査を行なった。その結果を過去の調査のデータも踏まえて分析すると、次の総選挙は全国の1区で自民は劣勢に立たされており、広島1区で負け知らずの岸田首相さえ場合によっては落選の可能性があるとの見方が出た」

 報告を受けた岸田首相は、「“まさか、あり得ないだろう”という顔で聞いていたそうです」(同前)というのである。

 自民党に情勢調査について聞くと、「そうした件については、ご回答していません」(選挙対策本部事務局)とするのみだが、その後、岸田首相が通常国会会期末の解散・総選挙を断念したとの報道が流れた。その判断には、「党の極秘調査の結果が影響した」とも言われている。「現職総理の落選」は過去一度もないが、現状を鑑みるとあり得ない話ではないという。

 選挙分析に定評がある政治ジャーナリストの野上忠興氏はこう分析する。

「岸田首相が無党派層の多い都市部の広島1区で圧勝を続けてきたのは、有力な対立候補がいなかったからです。しかし、今回は裏金批判で全国的に自民支持層が自民離れを強めており、公明票も入りにくい。状況は岸田首相も同じか、もっとひどい。次の総選挙で広島1区に有力な対立候補が出馬して事実上の一騎打ちの構図になれば、強い候補と戦った経験がない岸田首相が有効な手を打てるとは考えにくい。現職総理が追い詰められ、小選挙区で敗れる可能性はあるでしょう」

 支持率は低くても、現職総理の地元は「おらが総理」を贔屓(ひいき)するものだ。

 だが、広島を取材すると、「岸田王国」に明らかな異変が起きていた。

(第2回に続く)

※週刊ポスト2024年7月19・26日号