フィリピン拠点の特殊詐欺、「ハコ長」束ねた上司は特定できず…手口や生活を詳細マニュアルで管理

AI要約

フィリピンを拠点に日本人グループが高齢者らを狙い、架空請求詐欺を繰り返していた事件について神奈川県警が捜査を進め、グループの手口や現地での生活が明らかになった。

グループはマニュアル化された手口で複数の被害者からお金をだまし取り、フィリピンのリゾートビラで集団生活を送っていた。

グループは顧客を3段階で対応し、電子マネーを騙し取る仕組みを構築しており、厳格な組織の中で管理されていた。

 フィリピンを拠点に日本人グループが高齢者らを狙い、架空請求詐欺を繰り返していた事件は、神奈川県警が1月に「かけ子」の男8人を逮捕し、組織の実態解明を進めてきた。被害は1億円を超え、捜査関係者への取材や公判記録などからは、細かくマニュアル化されたグループの手口や現地での管理された生活などが見えてきた。(石塚柚奈)

 「金になる仕事がある。やらないか」。住所不定、無職の男(30)ら26~35歳の8人(詐欺未遂罪などで公判中)は知人や先輩から誘われ、グループに加わったという。

 8人は、フィリピンに複数あったとされる「ハコ」と呼ばれるリゾートビラで共同生活を送っていた。「ハコ長」とされる古参メンバーは2019年の初旬に入国。現地当局に入管法違反で拘束される20年2月まで、日本へ電話をかけ続けていた。

 手口はマニュアル化され、複数のショートメール配信業者に「未払い料金がある」などのメッセージ配信を依頼。電話をかけてきた人を「顧客」と呼び、ターゲットにしていた。

 顧客対応は3段階に分かれていた。最初の「新規」は未払いがあると信じ込ませ、電子マネーをだまし取る。一度成功すると、顧客データは古参メンバーに引き継がれ、かけ子を代えて第2段階の「協会」、第3段階の「セキュリティー」に移る。男らは名乗る団体の名称を使ってそう呼び合い、被害者に電話をかけ、詐欺と気付かれるまで電子マネーをだまし取っていたという。

 そんな男たちもハコでは管理されていた。午前8時45分頃、ハコ長の朝礼で「始業」し、午後5時頃に「終業」。目標に達しなければ「残業」もあったという。成績によってランク付けされ、ランクに応じて外出や電子機器の使用が認められたという。

 ハコ長だった30歳の男はメッセージアプリを使い、複数のハコを統括する「上司」に始業報告など連絡を入れていた。食料や生活必需品は上司から現地民を介し、支給されていたというが、その上司は逮捕されておらず、特定もされていない。