10万円増も…“大学の授業料引き上げ”に池上彰さんが思うこと「子どもの未来を閉ざすことになります」

AI要約

東京大学が授業料の引き上げを検討中で、国立大学が授業料を引き上げる動きが相次いでいる。ヨーロッパとアメリカの大学教育の特徴に触れながら日本の状況を比較すると、日本は学費が高すぎず低すぎずの中間的な位置にある。

ヨーロッパでは大学教育が税金によって無償で提供され、学ぶ意欲のある子どもを国が支援する。アメリカは個人主義的で、大学の学費が高額であり、無償教育に反対する考えが強い。

日本は中途半端ながら、政府の補助金や助成金により学費が抑えられている。しかし、国立大学の授業料値上げは、学ぶ意欲のある子どもたちの進学を阻害する可能性がある。

10万円増も…“大学の授業料引き上げ”に池上彰さんが思うこと「子どもの未来を閉ざすことになります」

 現在、授業料の引き上げを検討している東京大学。国が定める上限まで引き上げられた場合、現在の年間53万5800円から10万円余りの増額となる可能性があるとのこと。

 東大に限らず、国立大学が授業料を標準額より引き上げる動きはここ数年で相次いでいるとのことですが、この件について、ぜひ池上さんのご見解をお聞きできればと思いました。(40代・男性・会社経営者)

 ヨーロッパは税金によって大学の授業料が無償になっているところが多い一方、アメリカは大学の学費が猛烈に高い特徴があります。日本は、その中間なのです。

 ヨーロッパでは、「子どもは社会が育てる」という意識が高く、経済的に恵まれていなくても学力が高く学ぶ意欲がある子どもは国が支援しようというわけです。

 一方、アメリカは個人主義。「社会が育てる」など社会主義の発想だと考える人が多く、「大学に行く人のために、大学と無縁の国民から集めた税金で授業料の補助をするなど許せない」という発想の人が多いからです。

 その点、日本は中途半端。学費が高くなりすぎては学ぶ意欲のある人が入れなくなると考えて政府の補助金や助成金が投入されていますが、無償にはなっていません。その結果、私学の学費は、高いけれど、この程度に収まっているとも言えるのです。

 これまで国立大学の授業料は、私学よりは低廉なので進学できた子どもたちもいたのですが、学費の値上げは、こうした子どもたちの未来を閉ざすことになります。

 政府に金のない事情はわかりますが、授業料を無償にすることは、未来を支える若者たちへの投資なのです。若者への投資を怠る国家は衰退への道を歩むことになります。