保険料の納付期間延長は見送り検討 国民年金、反発の声が根強く
AI要約
厚生労働省は、国民年金保険料の納付期間を64歳まで5年延長する案を見送る検討に入った。自営業者や非正規労働者の反発や財政上の問題が理由だ。
厚労省は5年延長案のメリットとして、約100万円の追加保険料負担がありながら、年金給付は増加する見通し。所得代替率も改善されるとしている。
しかし、他の施策でも所得代替率の改善は可能であり、保険料負担増に対する批判が強いため、実施は見送られる可能性が高い。政府・与党内は議論を避けるムードが広がっている。
厚生労働省は、3日に公表した年金の財政検証の結果を踏まえ、国民年金保険料の納付期間を64歳まで5年延長する案を見送る検討に入った。国民年金に加入する自営業者や非正規労働者に発生する追加的な保険料負担に反発する声が根強く、巨額の公費も必要になるためで、次回以降に持ち越す情勢だ。
厚労省は5年延長案について、国民年金の保険料負担（月約1万7000円）が5年間で約100万円に上る一方で、年金給付は年約10万円増えると説明していた。財政検証では、現状の経済情勢が続く「過去30年投影ケース」で57年度の所得代替率（現役世代の手取り収入に対する年金支給額の比率）は50・4％だが、5年延長案を実施すれば55年度に57・3％に改善するとしている。
ただ、5年延長案を採用しなくても、所得代替率を改善させる施策は他にもあり、保険料の負担増加に対する国民の批判が根強い。自民党総裁選や解散総選挙を控え、政府・与党内は議論を避けたいムードが高まっていた。【宇多川はるか】
