カオス過ぎる都知事選ポスターの皮肉な副次効果、規制議論の一方で選挙への関心を高める人々

AI要約

東京都知事選で異例のポスターが論議を巻き起こしている。全裸女性や風俗店の広告、愉快なキャラクターの数々が登場し、警告を受ける事態に至った。

立花孝志党首率いるN党が複数のポスターを貼りまくり、公選法に抵触する可能性も。24枚のポスター掲示に関して、撤去が難航し混乱を招いた。

選挙ポスターの目的は周知であり、無断剥がしは違法。現状ではこれらの問題に十分な対応がなされていない。

カオス過ぎる都知事選ポスターの皮肉な副次効果、規制議論の一方で選挙への関心を高める人々

 多少のおふざけには寛容なネットユーザーたちも、その多くが「ドン引き」しているのが今回の東京都知事選ポスターだ。これまでも多少の物議を醸す政見放送や選挙ポスターはあったが、ポスター版の3分の1以上に候補者以外のポスターが掲示される選挙は後にも先にもないかもしれない。モラルの崩壊が規制を招くのは必至の状況だが、足もとでは意外な影響も見られる。(フリーライター 鎌田和歌)

● 全裸女性のポスターまで 最多56人が入り乱れる都知事選の掲示板

 立候補者が最多56人となった東京都知事選。想定外の候補者数のためポスター掲示板が足らずクリアファイル対応となったが、それ以上に話題になったのがポスターの内容だ。

 ある男性の候補者が貼り出したポスターの一部は、ほぼ全裸の女性が扇状的なポーズをとったもの。体の一部が候補者が過去に政見放送を行った際の写真で隠されていたため、見た人が候補者の顔や名前を確認するためには、この部分を凝視する必要があった。

 ポスターには大きめの文字で「表現の自由への規制はやめろ。」「我々はこの腐った社会を揶揄し続ける。」などと書かれていた。性的な表現を守り「表現の自由」を求める風潮はネット上、特にX(旧ツイッター)で強く、また「腐った社会を揶揄」のように既存の価値観へのアンチテーゼがもてはやされる傾向もある。

 しかしこのポスターに関して、インターネット発のインフルエンサーである西村博之氏がXに投稿した感想は「『子供が見る』という視点が全くないのか、頭が悪いのか、どちらなのでしょうか?これが合法なんて世も末ですね。」だった。

 X上でも「さすがにこれはない」という反応が多く見られ、結局このポスターは告示日当日に警察から都迷惑防止条例違反の疑いで警告が出されている。候補者は警告を受けてポスターを撤去した。

● 「カワイイ私の政見放送を見てね!」が24枚 公選法により悪質ポスターの撤去は難しい

 今回、警告が出たのはこのポスターだけではない。他の候補者の枠に貼られたポスターが女性用風俗店の広告だったとして、警視庁は「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首に風営法に抵触する恐れがあるとして警告を出している。

 これまでの報道でも周知の通り、N党からは今回24人が立候補している。ポスター掲示板の24枠を「ジャック」し、N党に一定の額(告示日当時は2万5000円)を寄付すれば、都内に設けられた掲示板に最大24枚までポスターを貼ることができるというのが立花党首の活動だ。

 これを利用した人たちが都内でさまざまなポスターを貼っており、ネット上で確認することができるものだけでも、たとえば人気キャラクターのファンアートと見られるもの、アイドルグループらしき人たちの宣伝、主張不明のかわいい動物のイラストなどがある。

 さらに、立花党首本人が貼ったと思われる、前党首の女性の顔写真と名前に「お金を返してください!」と書いたポスターや、AIのような女性の顔写真とともに「カワイイ私の政見放送を見てね!」とQRコードを掲示したポスターもあった。

 24日には新宿区歌舞伎町でN党のポスター19枚が破られる被害があったと報道されている。報道の写真で確認すると、これは「歌舞伎町ホスト」などと書かれた男性の顔写真入りのポスターだった。

 今回、警告の出たポスターについては自主的に撤去が行われたが、選挙ポスターを無断で剥がすことは公職選挙法に触れるため、候補者が警告に応じなかった場合は撤去が叶わなかったと考えられる。

 選挙ポスターはあくまでも候補者の周知のためとされ、候補者以外の顔写真やメッセージの流布に利用されることは想定されていない。「性善説」が採用されているため、これらの事態には対応できていないのが現状だ。