こどもホスピス全国に3か所…重病の子らゲーム大会やお泊り会で「当たり前」取り戻す

AI要約

がんや心臓病を抱える子ども向けの「こどもホスピス」は、終末期の看取りではなく、子どもに遊びと交流を提供する場。

大阪市の「TSURUMIこどもホスピス」は、小児科医らでつくる団体が2016年に開設。安心して過ごせる環境で、小学生や中学生などが利用している。

病気の子どもの「やってみたい」をサポートし、プラモデル教室やアジのさばき方を学ぶイベントなどを提供。設備も充実し、楽しい時間を提供している。

 がんや心臓病などの重い病気を抱える子ども向けの「こどもホスピス」は終末期の看取(みと)りではなく、子どもに遊びと交流を提供する場だ。

 大阪市の「TSURUMIこどもホスピス」は2016年、小児科医らでつくる団体が開設。建設費約4億円は日本財団とユニクロの助成金でまかない、年間6000万円以上の運営費は市民らの寄付が支える。

 看護師らがスタッフにおり、安心して過ごせる。小学生や未就学児の利用が大半だが、近年は中学生以上も楽しめるようにと工夫を凝らす。この世代は闘病に時間を奪われ、同級生と比べて「出遅れている」と悩むケースが多いためだ。

 6月23日に開かれた模型メーカー「海洋堂」(大阪府門真市)によるプラモデル教室には、中高生ら12人が参加した。

 奈良県の高校2年男子(16)もその一人。全長約10センチの肉食恐竜を組み立て、体を黄土色に、口の中を赤で塗り上げた。「集中しすぎて少し疲れたけど、密林にいる恐竜の雰囲気を出せた」と笑顔だった。

 男子高校生は、心臓から肺に血液を送り出す出口が生まれつき塞がる「純型肺動脈閉鎖」と闘う。3歳で、人工血管で迂回(うかい)路を作る手術を受け、血中の酸素が不足する症状は改善した。だが、術後の合併症のため入退院を繰り返し、中学時代は運動会や修学旅行に参加できなかった。同ホスピスには昨年5月に通い始めた。

 病気の子どもの「やってみたい」を同ホスピスは後押しする。「魚をさばきたい」との男子高校生の希望を受けて、板前にアジのさばき方を学ぶイベントが昨年8月に実現した。男子高校生は「みんなが楽しんでくれてよかった」と振り返る。

 設備についても、昨年3月に2階を改装し、パソコン室やカラオケルーム、ソファのある部屋を新設した。友人同士のお泊まり会も開いている。

 中学生以上の支援を担当するスタッフの川戸大智さんは「10代の『当たり前』を取り戻す手助けをしたい」と話す。(竹井陽平)