〈トイレまで付き添い〉〈職員は廊下で仮眠〉児童相談所「超激務」で千葉県を訴えた元職員男性の「決意」

AI要約

教育や児童福祉の現場では、厳しいルールや重いプレッシャーにさらされる職員の実態が明らかになっている。

施設内の管理が厳格であり、児童の安全を守るために無数のルールが存在するが、人手不足や長時間労働によるストレスも深刻な問題となっている。

入所児童の増加に伴い、職員の業務負担はますます増大し、適切なケアが困難になっている。

〈トイレまで付き添い〉〈職員は廊下で仮眠〉児童相談所「超激務」で千葉県を訴えた元職員男性の「決意」

 教育や児童福祉の現場は、いじめやネグレクトの見逃し、職員の不適切な行為などネガティブな側面が報じられることも多い。無論あってはいけないが、彼らが重いプレッシャーに晒されながら長時間の労働を強いられていることもまた事実で、不可視化されがちだ。福祉の現場改善を訴えるために、法廷で行政と闘うことに決めた男性を取材した。

 前編記事『〈研修なしで夜勤〉〈座っていると『休憩』カウント〉元職員が訴えた千葉・児童相談所「超ブラック労働」の実態』はこちらから

 特に、飯島さんが憔悴したのは、「施設内のルールが無数にあること」と、「児童の行動観察を記録する業務」だった。

 前述の通り、施設内では、秩序を維持するため管理が徹底されている。児童が脱走しないようトイレは極力付き添い、食事の時間は児童の食べ残しがある程度なくなるまで居残り、閲覧するテレビ番組や読書の本も選定する。些細なことで言えば、折り紙を使用できるのは1日3枚まで、ドレッシングとマヨネーズは両方使用してはいけないなどルールは無数にあった。

 「こうした数多くのルールは、児童の安心安全を守るためにあります。ただ、職員が人手不足になると、どうしても管理が行き届かなくなる。そのためルールを厳格にして、管理を徹底せざるを得ない状況に陥っています。

 ただルールの徹底により、児童と接するうえで気を揉む瞬間も多々あります。ベテランの職員からは、施設の運営を円滑にするため厳しく指導するよう注意されましたが、必要以上に児童を叱ることに抵抗感もある。新人でモチベーションも高い時期に、無理に児童を押さえつけることは大きなストレスでした」

 他の施設では、児童が集団脱走したり、トイレの個室で集団いじめが発生したり、深夜に児童同士が性行為にいたるケースもある。やはり不祥事を防ぐための措置は必要であり、恋愛や暴力はご法度、本名で呼び合うことも禁止し、プライバシー漏洩の防止を徹底する施設もある。

 児童の活動時間が終わった後は、児童の行動観察を記録する必要がある。ここでも研修はなく、先輩の記録を見よう見真似で書いていたことで勤務時間は長引き、4月時点で残業が1日3時間以上に及ぶことも頻繁にあった。

 4月中旬には、同期の一人が異動となり、代わりとなる人員補給がなかったことで、業務はより逼迫していく。

 さらに拍車をかけるように、5月には入居児童が増えていく。当該の一時保護所の日誌によれば、入所児童は、5月1日に29人、5月8日に34人、5月15日に37人、5月19日に40人と増加。6月にはさらに増え、定員の倍以上の入居児童を担当することとなった。