ICT機器を使うほど学力が低下? 新聞を教材にする“NIE教育”の活用法は 佐々木俊尚氏「“なぜ新聞ごとに違う論調になるのか?”を学ぶのが大事」

AI要約

ICT教育による学力低下の報道が話題になっている。多くのデータや研究結果が示唆するところではあるが、因果関係の証明は難しい。

スウェーデンでは児童の読解力の低下が報告され、アナログ教育への回帰が始まっている。

デジタル教育の是非については、時間をかけて検討し、様々な視点からのデータを集めるべきだとの指摘もある。

ICT機器を使うほど学力が低下? 新聞を教材にする“NIE教育”の活用法は 佐々木俊尚氏「“なぜ新聞ごとに違う論調になるのか?”を学ぶのが大事」

 現代人の必需品となったスマホやパソコン。子どもたちも例外ではなく、2020年からは全国の小中学校で1人1台のタブレットの導入が進められ、2022年度末に99.9%の自治体で整備が完了。ここ数年でデジタル機器やテクノロジーによるICT教育が広がってきた。

 そんな中、「ICTを使うほど学力が下がった」という一部報道が話題になっている。12日、教育での新聞活動を推進する埼玉県NIE推進協議会の総会で、国の学力テストの結果を分析したところ、「デジタル機器を使えば使うほど学力が下がることがわかった」と指摘した。さらに、子どもたちはスマホで動画漬けになり、脳の機能が低下しているとの医学データも提示。新聞など多様な文章に触れる必要性を強調した。

 ICT教育は学力低下を招くのか。『ABEMA Prime』で議論した。

 「ICT機器は使うほど学力が低下する」と主張する、元小学校長で日本新聞協会NIEコーディネーターの関口修司氏は「文部科学省の全国学力・学習状況調査で、平均正答率とICT機器の学習での使用時間をクロス集計したら、使えば使うほど“学力が下がっていた”という結果がわかった。30分未満と3時間以上とではほぼ10ポイントの開きがある」と述べる。

 東京大学やNTTデータ経営研究所などによる研究では、紙を使用したほうが脳は活性化するという結果もある。「東大の脳科学者・酒井邦嘉さんが、同じ文字を紙で見たのとディスプレイで見たのとでは定着率が違うという報告をされている。紙の手触りやインクのにおい、それこそ落書きなどの無駄も含めて理解するので、定着率が高いということだ」と説明した。

 一方、「現代の教育でICTの効率的活用は必須」と主張する現役数学教師の西村章氏は「定量的に学力が下がったとは言えないのでは」と疑問を呈する。「確かにデータとして出ているが、相関性しかない。因果関係があるかどうかを証明できていないので、そのデータだけで断定的なことを言うのは難しいと思う。実際にはペーパーテストもあるし、タブレットと紙・ペンの両方を使うハイブリッド型になっている」。

 教育でのデジタル化が進んだスウェーデンでは、2016年から2021年の間に児童の読解力が低下したことが判明。2023年8月から、印刷された本の利用や手書きの練習に重点が置かれ、デジタルからアナログへ回帰し始めているという。

 作家・ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「“北欧”“スウェーデン”ということで飛びつきたくなるが、長期的に見る必要があり、1つのデータで決めるのはいかがなものか。小学生など初めて学習する年齢の子どもにデジタルを触れさせていいのかは、もう少し時間をかけて、いろいろな試験やテストをやった上で判断したほうがいいと思う」との見方を示す。