「岐阜自衛官候補生銃乱射事件」から1年…「日本のメディア」は、なぜ「加害者の家族」までも不必要に追い詰めるのか

AI要約

2023年6月14日に岐阜市の自衛隊日野射撃場で起きた実弾射撃訓練中の事件で、自衛官候補生が発砲し隊員2名が死亡、1名が重傷を負った。事件の真相は不明であり、加害者家族には公的な支援はなく影響が及んでいる。

事件後、報道陣が詰めかけた加害者家族の自宅で、父親は失業に追い込まれた。加害者家族の不安や悩みは多く、社会復帰を批判するも公的な支援は受けられない現状がある。

過去の事件を挙げても、加害者の父親が自殺するケースが多く、失業や生活の困難が続いた末に命を絶つ例が後を絶たない。

「岐阜自衛官候補生銃乱射事件」から1年…「日本のメディア」は、なぜ「加害者の家族」までも不必要に追い詰めるのか

 2023年6月14日、岐阜市の陸上自衛隊日野射撃場で、実弾射撃の訓練中、19歳の当時、自衛官候補生が小銃を発砲し隊員2名が死亡、1名が重傷を負う事件が起きた。

 事件から1年が経過するが、事件がなぜ起きたのか、未だに真相は見えてこない。元自衛官候補生の父親によれば、息子の自衛隊への期待は相当高かったという。自衛官を目指すようになったのは父親の影響が大きく、息子は少なからず国を守るという使命を持っていたと話す。元候補生が入隊前、「戦争モノ」の漫画やゲームに傾倒していたと報じたメディアもあったが、様々なジャンルを好んでおり、とりわけ戦争モノを好んだという報道には違和感を示す。

 夢と希望を持って入った自衛隊だったが、父親は入隊後、息子から「自衛隊はゴミだ……」と周囲の意識の低さに失望したという発言を聞いていた。いずれにせよ、事件の進展は伝えられておらず、家族としては、亡くなられた方々の冥福を祈ることしかできない状況にある。

 事件後、家族の住む自宅には報道陣が詰めかけ、父親は失業に追い込まれた。NPO法人WorldOpenHeartの調査によれば、加害者家族から寄せられる相談で最も多い続柄が「父親」であり、仕事を続けてよいのか悩むケースが多い。

 本件同様に複数の死者を出したある重大事件の犯人の父親もまた、事件の影響で辞職せざるを得なかったが、筆者が復帰を勧め仕事を再開した。社会復帰を批判するメディアもあったが、加害者家族には公的な支援制度はなく、自力で生活していかなければならない。父親たちの失業によって、兄弟が進学を諦めなければならなくなるケースも多く、責任のない家族にまで影響が及んでいる。

 自ら命を絶つケースが多いのも「父親」である。1988年に起きた「東京・埼玉連続幼女誘拐殺害事件」の犯人の父親は投身自殺を図って亡くなっており、2014年に起きた佐世保同級生殺害事件の犯人の父親の自殺が報道されている。公にはならなくとも、仕事を失い、生活が立ち行かなくなった末の父親による自殺は後を絶たない。