戦後100年へ「平和」語り継ぐ 水落敏栄・日本遺族会会長に聞く【政界Web】

AI要約

遺族会の活動の根幹は英霊の顕彰と遺族の福祉向上であり、特別弔慰金の継続が懸案となっている。

遺族会は高齢化する対象者を考慮し、最後の処遇改善運動を行い、その後は国に継続されるよう求めている。

水落氏は100年間の活動を通じて、英霊顕彰と平和の語り部活動を続け、次世代へのメッセージとして戦争の悲惨さと平和の尊さを伝えたいと述べている。

戦後100年へ「平和」語り継ぐ 水落敏栄・日本遺族会会長に聞く【政界Web】

 日本は来年、戦後80年を迎える。当時を知る世代が高齢化する中、次世代にどう記憶を継承していくのか。日本遺族会の会長を務める水落敏栄元参院議員に聞いた。(時事通信政治部 大塚淳子)

 ―当面の取り組みは。

 活動の根幹は、英霊の顕彰と遺族の福祉向上だ。来年4月に最終償還を迎える戦没者らの遺族に対する特別弔慰金の継続が懸案だ。「国は戦没者を忘れない」という趣旨からも、継続に向けて運動していきたい。

 ―活動はいつまで続ける。

 遺児の平均年齢は83歳で、遺族の兄弟の平均年齢はおよそ96~97歳だ。対象者推定60万人の高齢化を考えると、最後の処遇改善運動になると思っている。それ以降は、われわれが運動しなくても継続されるよう、国に考えてもらいたい。

 ―英霊顕彰に重点が移るのか。

 そうだ。本当の英霊顕彰は何かと考え、「平和の語り部」という結論に達した。政府もその重要性に鑑み、今年度の新規補助事業として2500万円の予算を付けた。これを今後の遺族会の主軸として活動を続けたい。「『戦後』は100年たたなければ終わらない」と言われる。来年で創設78年となる遺族会も100年まではやりたい。

 勝手な考えだが、遺族会が100年間、顕彰を続けていけば、英霊も許してくれるのではないか。そのとき、私たち戦没者遺児はいなくなるが、次世代を担う青年部や周りの方がさらに続ける判断をしてくれればありがたい。

 ―平和の語り部とは。

 戦争を体験した遺族と、戦後生まれの青年部が共に活動することを目指している。私は1943年生まれなので、空襲など直接的な戦争の記憶はない。しかし、父が戦死して戦後は貧乏だった。父の不在が理由で就職試験に全て落ちるなど差別も経験した。こうしたことを語り、戦争がいかに悲惨なものか、平和がいかに尊いものかを伝えればいい。

 ―水落氏は2022年参院選に組織内候補として出馬したが落選した。集票力が低下しているのか。

 いったん引退表明した後、ピンチヒッターで出馬したが、運動期間が5カ月しかなかった。3期18年で築いた人脈のおかげで、落選の影響は今のところない。現在の文部科学相や厚生労働相らも、かつて一緒に仕事した方ばかりなので、遺族会の活動を説明しやすい。

 ―今後の選挙で対応方針は。

 比例代表や選挙区にかかわらず、遺族会を応援してくれる候補を推薦する。条件として「靖国神社に参拝する」と署名した方を応援する。

 ―自民党支持は変わらないのか。

 かつて自民党が2回下野したときも、遺族会はぶれずに支えてきた。今年3月の党大会で決めた運動方針は、従来の靖国神社参拝に加え、護国神社参拝にも触れていた。各地には郷土出身の英霊を祭る護国神社があるので、ありがたいと感じた。