島根原発2号機運転差し止め、仮処分申請却下 住民は裁判所の「思考停止」を批判

AI要約

中国電力の島根原発2号機の再稼働を求める地元住民らの仮処分申し立てが広島高裁松江支部によって却下された。

仮処分は裁判所が暫定的な措置を認める処分であり、債権者が不利益を被る可能性がある場合に取られる。

住民側が再稼働を阻止し、事故の発生を未然に防止するために仮処分を申し立てたものの、裁判所は申立書に基づき却下決定を下した。

島根原発2号機運転差し止め、仮処分申請却下 住民は裁判所の「思考停止」を批判

 全国で唯一、県庁所在地にあり、今年12月の再稼働をめざしている中国電力の島根原発2号機(松江市)――。中国電力による地震などへの対応が不十分であることを理由に、地元住民らがその運転差し止めを求めた仮処分の申し立てで、広島高裁松江支部(松谷佳樹裁判長)は5月15日、申し立てを却下する決定を下した。仮処分を求めてきた弁護団・申立人グループは「本決定は、原子力規制委員会の判断を無批判に前提として、思考停止に陥っている。(中略)行政追随の思考停止決定である」との声明を発表し、裁判所の判断を強く批判した。

 仮処分の申し立てとは何か。

 裁判の結果を待っていては、債権者に不利益が生じる可能性がある場合に、債権者の権利を保全することを目的として、裁判所が暫定的な措置を認める処分のことをいう。今回、島根原発2号機の周辺に住み、生活への不安を感じる住民が「債権者」となり、中国電力を「債務者」として申し立てた。

 債権者となった4人は島根・鳥取両県の住民で、うち3人が原発から30キロメートル圏内に住んでいる。島根原発2号機の運転差し止めをめぐっては、住民側が1999年4月に提訴。2010年5月に松江地裁が請求を棄却し、住民側は控訴した。控訴審は係争中で、判決確定までに時間がかかるため、住民側が23年3月に仮処分を申し立てたのである。

 提出された申立書では、申し立ての理由について「債権者らは、現世に生きる者のみならず、将来世代のためにも、安全を欠き、離隔要件に反し、避難計画に実効性がない本件原子炉の再稼働を阻止し、重大な事故の発生を未然に防止するため」と説明している。

 5月15日に下された広島高裁松江支部の決定は①判断の枠組み、②地震に対する安全性、③火山事象に対する安全性、④立地審査指針違反の有無、⑤原子力災害対策指針の合理性と避難計画の実効性――の五つの争点について判断を下している。