死亡ひき逃げで一部無罪判決、事故現場の再現方法に疑義 札幌地裁

AI要約

被害男性が横断歩道近くで車にひかれ死亡した事故で、加害者が過失運転致死とひき逃げの罪に問われた裁判の判決が出された。

過失運転致死の罪については無罪判決が下されたが、ひき逃げの罪で懲役8カ月執行猶予3年が言い渡された。

裁判官は加害者に対し、現場で適切な対応をすれば遺族の感情も和らげられた可能性があったとして説諭した。

死亡ひき逃げで一部無罪判決、事故現場の再現方法に疑義 札幌地裁

 黒い服を着て横断歩道近くに横たわっていた被害男性(当時32)が車にひかれて死亡した事故で、過失運転致死と道路交通法違反(ひき逃げ)の罪に問われたアルバイト従業員の男(48)=札幌市東区=の判決が5日、札幌地裁であり、新宅孝昭裁判官は過失運転致死罪について無罪を言い渡した。

 判決によると、男は昨年7月10日午前2時20分ごろ、札幌市北区の国道交差点で青信号を直進し、時速42~46キロで走行していたところ、横断歩道近くに横たわっていた被害男性に気がつかないままひいた。

 検察側は、事故当時の状況を再現した見通し実験の結果から「男が前方注視義務を尽くしていれば被害男性を発見できた」と主張していたが、判決は「男が被害者の存在をあらかじめ知った上での実験で、事故当時に比べて被害者を発見しやすい可能性がある」と指摘。男が前方を注視していても被害男性を発見できなかった可能性があるとして、過失を認めなかった。

 一方、男が事故直後に現場へ戻って黒色の物体を確認した時点で、人をひいた可能性を認識していたと認め、再び現場から立ち去ったひき逃げの罪について「被害者や事故の状況を一切確認しなかった非難の程度は相応に大きい」として、懲役8カ月執行猶予3年とした。

 新宅裁判官は判決を読み上げた後、「現場できちっと対応できていれば遺族感情もすこしは和らいだかもしれない。事件に向き合ってほしい」と説諭。男は無言でうなずいていた。(上保晃平)