自民推薦の「神通力」に陰り 堅調だった地方選で黒星相次ぐ 東京都港区や目黒区など

AI要約

自民党推薦候補の落選が相次ぎ、東京都港区長選や神奈川県小田原市長選で自民系候補が敗れる事態が続いている。

自民党は政治とカネを巡る問題に揺れている中、地方選ではしばらく勝利を収めていたが、最近は勝率が下がっている。

各地の選挙では個別事情も影響しており、例えば港区長選では子育て・少子化対策を訴えた清家氏が勝利した要因がある。

自民推薦の「神通力」に陰り 堅調だった地方選で黒星相次ぐ 東京都港区や目黒区など

各地の地方選で自民党推薦候補の落選が相次いでいる。2日投開票された東京都港区長選は、自民が推薦した現職を無所属新人の清家愛氏が僅差で破って初当選した。昨年11月下旬以降、自民党派閥の政治資金パーティー収入不記載事件が大きく報じられて以降も、地方選で自民系候補は堅調に白星を重ねていた。ただ、4月下旬以降、東京都目黒区長選や神奈川県小田原市長選などで自民推薦候補が敗れる事態が相次ぐなど「自民推薦」の〝神通力〟が陰りつつある。

◆4月中旬まで7戦6勝も

「清家さんはママ友と一緒に選挙戦を戦われたと伺っている。都と区が連携しながら進めていきたい」

東京都の小池百合子知事は3日、清家氏と都庁で面会し、子育て政策などで連携をアピールしてみせた。

港区長選を制した清家氏は区議を4期務め、選挙戦で待機児童ゼロなどに取り組んだ実績をアピール。自民や公明が推薦し、区長を5期20年続けていた現職候補を約1500票の僅差で破った。

自民党は政治とカネを巡る問題で逆風下にある一方、地方選では手堅く勝利を収めていた。昨年11月下旬~4月中旬で自民と立憲民主党の対決型となった主要な7地方選を巡っては、自民は昨年12月24日投開票の東京都武蔵野市長選や今年1月21日の八王子市長選などを制し、立民系が勝利したのは2月4日の前橋市長選にとどまっていた。

自民関係者は「地方選は国政選挙と違い、政党色が前面に出ない。政治とカネの問題の影響は限定的ではないか」と語っていた。

◆人気弁士応援も

だが、4月下旬以降、情勢は一転する。

4月21日投開票の目黒区長選、5月19日の神奈川県小田原市長選、26日の静岡県知事選、同日の都議補選(目黒区)でそれぞれ自民党の推薦候補が敗れた。

小田原市長選を巡っては自民や日本維新の会、国民民主党が推薦する現職が、無所属元職の加藤憲一氏に敗れた。河野太郎デジタル相や小泉進次郎元環境相、地元の牧島かれん元デジタル相ら知名度の高い自民の応援弁士が駆け付けたにも関わらず、約2万1000票差の大敗だった。

また、5月26日投開票の広島県府中町長選でも自民、公明が推薦する無所属新人が敗れている。同町は新たに衆院広島1区に加わり、岸田文雄首相(自民党総裁)の地盤となる。

自民党政調会長室長などを務めた政治評論家の田村重信氏は、「都心の地方選は国政の風向きの影響を受けやすい。政治とカネの問題を受けて政党推薦の力が落ちているのは確かだろう」と述べた上で、「地方選にはそれぞれ個別事情がある。例えば港区長選の場合は、現職への多選批判に加えて、港区は都心回帰が進んでおり、子育てに需要があった。子育て・少子化対策を訴えた清家氏がニーズを捉えた点が好感されたのではないか」と語った。(奥原慎平)