自民再修正、民意と乖離 政治資金、使途公開は限定的 規正法改正、公・維取り込みへ首相譲歩〔深層探訪〕

AI要約

政治資金規正法改正を巡り、自民党は公明党や日本維新の会に譲歩する再修正案をまとめた。焦点の使途公開などは限定的で、政治とカネの透明化と民意との乖離が明らかだ。

再修正案の内容は公明案と維新案を取り入れつつ、抜け道探しや実施時期の先送りが目立つ。このままでは裏金事件の解明や政治不信の払拭が困難だ。

自民党は今国会中の成立を優先し、急展開の中で党内論議をスキップする姿勢を見せる。一方で真相解明への取り組みや世論への配慮が欠如しているとの批判も根強い。

自民再修正、民意と乖離 政治資金、使途公開は限定的 規正法改正、公・維取り込みへ首相譲歩〔深層探訪〕

 政治資金規正法改正を巡り、自民党は31日、公明党や日本維新の会に譲歩する再修正案をまとめた。今国会中の成立を最優先する岸田文雄首相の強い意向を踏まえたものだが、焦点の使途公開などは限定的な内容にとどまり、「政治とカネ」の透明化を求める民意との乖離(かいり)は明らかだ。裏金事件の真相解明は置き去りのままで、政治不信の払拭はなお見通せない。

 ◇「これまで通り」

 「二度と事案が起こらぬよう、責任体制の確立に全力を挙げる」。首相は31日、東京都内の会合で裏金事件に触れ、こう宣言した。

 これに先立ち、首相は公明、維新と相次ぎ党首会談に臨み、再修正案を取りまとめた。政治資金パーティー券購入者の公開基準額「5万円超」への引き下げは公明案、政策活動費の領収書の10年後公開は維新案を、それぞれ「丸のみ」したものだ。

 ただ、パーティー券の公開基準額「5万円超」について、自民内では「基準に引っかからないよう、参加者の1回当たりの購入額を抑える代わりに、開催頻度を増やせばいい」(ベテラン)などと、早くも「抜け道」を探る動きが見え隠れする。さらに、自民がまとめた再修正案の要綱では、公開基準額の引き下げは2027年から実施すると規定。当面は現行の「20万円超」が続くことになる。

 政策活動費の10年後公開に対しても、野党幹部は「なぜすぐに公開できないのか」と疑念の目を向ける。対象範囲もなお曖昧だ。企業・団体献金の見直しは、自民内で反対論が根強く、踏み込まずじまいだった。

 「要するにパーティー券も政策活動費もこれまで通りとの宣言にほかならない」。共産党の山添拓政策委員長は31日の記者会見でこう断じた。

 ◇成立優先

 規正法改正を巡っては、世論の逆風を意識した公明が30日、自民が当初示した修正案の再検討を要求。首相が明言した今国会成立が危ぶまれる事態となった。

 焦りを募らせた首相は、側近らと慌ただしく対応を協議。水面下で公明、維新と幹部間の交渉を重ね、最後は首相自身が電話で党首会談の約束を取り付けた。与野党の修正協議を担ってきた自民の実務者らは、事態の急展開ぶりに「何も聞かされていない」と困惑を隠さない。

 再修正案の成立を急ぐため、自民は党内論議を「スキップ」する方針を所属議員に連絡。6月4日の衆院通過を視野に入れる。「時間がないから、中身を飛ばし日程を決めて、特急列車みたいだ」。立憲民主党の安住淳国対委員長は、記者団にこう皮肉った。

 この間、真相解明の取り組みは進まず、自民内からは「世論には逆効果だ」(中堅)との懸念が漏れる。自民重鎮は「後手後手なのはいつも同じだ」と首相の対応を批判した。