「月商100万円以下」では採算が合わない…零細飲食店が頑なに「モバイルオーダー」を導入しない切実な理由

AI要約

飲食業界でモバイルオーダーが急速に普及しており、顧客満足度が高いことが調査結果から示されています。

モバイルオーダーの導入により、飲食店側もコスト削減や人員配置の効率化が図れる一方、小規模店舗への導入が難しい現状も浮き彫りになっています。

大手チェーン店を中心にモバイルオーダーが普及しており、システムの導入によってサービス向上や業務効率化が図られています。

飲食業界で自分のスマホから料理を注文するモバイルオーダーの対応店が増えている。グルメジャーナリストの東龍さんは「ただし月商100万円以下の小規模な店では、コストが大きく導入が難しい。だが、非対応のままでは客に敬遠されてしまう可能性もある」という――。

■スタバのモバイルオーダーシステム障害がニュースに

 5月20日、スターバックスでシステム障害が起き、モバイルオーダーが利用できない状況に陥ったことがニュースになった。

 念のため説明すると、モバイルオーダーとは飲食店で客が自分自身のスマホやタブレットを用いて注文を行う方法だ。スタバでは2019年より専用システム「Mobile Order & Pay」をスタートし、ほぼ全店舗で導入している。朝の慌ただしい時間帯に起きたトラブルに、SNSでは来店した客たちの嘆きや困惑が多く見られた。

 あるいは、同時期にXで話題になったのが「モスバーガーはモバイルオーダーをすると通信費を10円くれる」という旨のポストだ。このサービスを「令和最後の善意」と評したポストは1300万以上のインプレッションに達している。

 モバイルオーダーに関する話題が大きく広がるのは、それだけこの方法が社会に浸透してきているからだろう。

■利用した客の9割が「満足」と回答

 ぐるなびが2022年6月30日に発表した「モバイルオーダーの利用実態調査」によると、41.4%もの人が食店におけるモバイルオーダーを利用したことがある。年代別では20代が56.4%で最も多い。利用業態は「ファストフード」が50.4%、「寿司」が15.0%、「居酒屋」と「ファミレス」が12.8%と続く。利用シーンは「家族との外食」が42.0%、「一人での外食」が39.9%、「友人、知人との外食」が22.5%。さまざまなTPOで活用されており、「満足」「やや満足」とした利用者は88%にのぼった。

 別の調査でも、51.8%が「モバイルオーダーを使ったことがある」と回答(New Innovations「モバイルオーダーに関するアンケート」2023年10月12日発表より)。これは同社が半年前に行ったアンケートより10%増加している。週1回程度以上の利用が46.9%となっており、モバイルオーダーを利用したことがある人のうち、96.6%が「とても満足している」「やや満足している」と回答した。

■オーダー業務がなくなって少人数で運営が可能に

 スタバやモスのみならず、多くの大手飲食チェーンがモバイルオーダーを導入している。マクドナルドやケンタッキー・フライド・チキン、吉野家やすき家といったファストフードのほか、ガストやバーミヤンなどを運営するすかいらーくグループ、磯丸水産や鳥良商店などを運営するクリエイト・ダイニング等、さまざまな業態で活用されている。

 これほど一気にモバイルオーダーが世に広まったのは、当然のことながら、店側のメリットが大きいからだ。

 飲食店からすれば、オーダー業務がなくなるのでサービススタッフを減らすことができ、人的工数や人件費を削減できる。飲食業界は人材不足に陥っているので、より少ない人数で運営できるのは魅力だ。ワンオペの飲食店なら調理だけに集中できるようになる。

 システムによっては、クレジットカードに加えてQR決済や電子マネーなどさまざまな決済手段にも対応している。これによって会計業務も省ける。

 結果としてサービススタッフは、配膳(サーブ)や下膳(バッシング)だけを行えばよくなり、接客により注力できて顧客満足度を高められる。