「売上」や「財務状況」だけでは実態はわからない、投資の視点で「良い会社」を判断するポイント

AI要約

東証がPBR(株価純資産倍率)が低迷している上場企業に対し改善要請を強化したことから、「ROE(自己資本利益率)を高める経営」が再注目されている。

アメリカの投資ファンドでアナリスト等を歴任した森憲治氏が、クオリティ投資の視点から、質の高い会社について考察している。

クオリティ投資とは、質の高い会社に投資を行なう投資手法であり、市場平均以上の投資リターンを上げることができることが示されている。

「売上」や「財務状況」だけでは実態はわからない、投資の視点で「良い会社」を判断するポイント

東証がPBR(株価純資産倍率)が低迷している上場企業に対し改善要請を強化したことから、「ROE(自己資本利益率)を高める経営」が再注目されている。では、どんな会社が「良い会社(クオリティの高い会社)」なのか。アメリカの投資ファンドでアナリスト等を歴任した森憲治氏が、長期投資の視点から、企業価値を高め、国内外の投資家から評価される会社について考察する。

※本記事は森氏の著書『米国の投資家が評価する「良い会社」の条件 クオリティ投資の思考法』から一部抜粋・再編集しています。

■「クオリティ投資」とはどういうものか

 クオリティ投資とは、文字どおり、質の高い会社に投資を行なう投資手法であるが、何をもって質の高い会社というかは専門家のあいだでもそれぞれであり、明確な定義は存在しない。

 また、クオリティ投資といってもさまざまな手法があり、クオリティ投資全般が市場平均以上の素晴らしい投資リターンを上げることができるわけではない。

 ただし、クオリティ投資を行なうことで市場を大きく上回る投資リターンを達成している投資家は数多く存在する。

 たとえば、英国のウォーレン・バフェットとも呼ばれる英ファンドFund Smithの創設者であるTerry Smithは、「良い会社を、そのクオリティに見合った金額内で買い、長期的に保有する」というシンプルな哲学に基づいて投資判断を行なう、代表的なクオリティ投資家の一人だ。

 彼は、2010年のファンド創設から2022年にかけて478%の投資リターンを上げた。これは市場平均の256%を大きく上回る数字である。クオリティ投資が機能した一例といえよう。

 「株式指数におけるクオリティ投資」(『三菱UFJ信託資産運用情報』2020年7月号)では、「クオリティ」について確固たる定義が存在しないことを前置きしたうえで、各指数会社(インデックスプロバイダー)が提供するクオリティ指数について、どのような特性指標が用いられているかを整理している。

 なお、インデックスプロバイダーとは、同じような性質を有する株式をまとめ、1つの投資商品(インデックスと呼ぶ)のように投資パフォーマンス(指数)を測定し、その情報を投資家等に提供する業者を指す。