【社説】将来の電源構成 再エネの遅れを直視せよ

AI要約

2050年の脱炭素社会実現のために再生可能エネルギーの拡大が不可欠である。

現行計画では再生エネの導入が遅れており、原発に対する依存度も低いため、基本計画の見直しと施策の打ち出しが急務である。

再生エネの安全性や導入コスト、国際的な動向を考慮し、日本のエネルギー政策を再検討する必要がある。

【社説】将来の電源構成 再エネの遅れを直視せよ

 政府が目指す2050年の脱炭素社会実現は、再生可能エネルギーの拡大にかかっている。太陽光発電や風力発電を推進する思い切った目標と施策を打ち出すべきだ。

 経済産業省が、エネルギー基本計画を見直す議論を始めた。40年度を見据えた電源構成目標を検討し、本年度内の改定を目指す。

 基本計画は国のエネルギー政策の中長期的な指針で、ほぼ3年ごとに見直してきた。

 課題は明らかだ。現状は二酸化炭素(CO2)を排出する火力発電に発電量の70%強を頼る。この割合を早く引き下げなくてはならない。

 特にCO2排出量が多い石炭火力は35年までに段階的に廃止することで先進7カ国(G7)が基本合意した。

 国際エネルギー機関は、脱炭素社会に向けた取り組みにより、50年の世界の電源構成は再生エネが89%を占めると予測する。この未来像に対する日本の取り組みは大きく遅れている。

 21年10月に閣議決定した現行計画は、再生エネを主力電源と位置付け「最優先の原則の下で最大限の導入」を明記した。30年度の電源構成目標で再生エネを36~38%へ引き上げたものの、22年度は22%にとどまる。

 主要国と比べても見劣りする。G7の再生エネの電源割合は、水力資源が豊富なカナダの69%は別格としても、ドイツと英国が40%台、イタリア36%、フランス24%で、米国以外は日本を上回る。30%の中国にも先を越された。

 太陽光や風力の発電量が天候に左右されるのは各国共通で、日本で導入が進まない理由にはならない。

 純国産エネルギーである再生エネの拡大はエネルギーの安全保障にも資する。導入コストを引き下げ、連系線の強化や蓄電池の導入など環境整備を急ぐべきだ。

 ビルの壁や窓に設置できる太陽電池や浮体式洋上風力の開発も加速させたい。

 今回の基本計画見直しは、岸田文雄首相が「最大限の活用」を打ち出した原発の扱いも焦点となる。

 先日開かれた経産省の審議会では、有識者から原発の新増設を求める意見が出たが、国民は東京電力福島第1原発事故を忘れていない。安全性への不安などから原発は再稼働が進まず、原発の割合は5%台でしかない。30年度に20~22%とした目標に程遠い。

 1月の能登半島地震は、原発事故が起きれば周辺住民の避難が困難なことを改めて浮き彫りにした。原発から出る「核のごみ」の最終処分先も決まっていない。

 国際機関の試算によると、コスト面でも原発は再生エネに太刀打ちできない。原発は出力調整ができず、再生エネ導入の妨げになりかねない。

 危険で割高な原発にこだわる理由はない。「可能な限り原発依存度を低減する」とした現行計画の基本路線を堅持すべきだ。