出店してほしい店を1軒ずつ訪問、酒を飲みながら口説いた…「キラキラな瀬戸内の魅力を世界に」両備HD松田敏之社長

AI要約

両備ホールディングスは岡山を拠点にまちづくりに取り組む企業で、瀬戸内の魅力を活かした観光客誘致や施設開発を行っている。

観光フリーマガジン「WONDERFUL SETOUCHI」や複合型施設「杜の街グレース」の取り組みにより、地方の魅力を発信し、地域活性化に貢献している。

将来的には訪日客の増加や国際的なホテルの誘致でさらなる成長が期待されている。

 岡山を拠点にバス、物流事業に加え、まちづくりを手がける両備ホールディングス(岡山市)。瀬戸内への観光客誘致や複合型施設の開発、地域の魅力発信をめぐってユニークな取り組みを続けている。松田敏之社長に、地方創生にかける思いや現状、展望を聞いた。(聞き手 山村英隆、写真も)

 世界中から訪れる旅行者が注目していたのは、かつては東京や大阪、京都、札幌といった有名観光地だったが、彼らは国内を一巡したことで、地方に目を向け始めた。地方の豊かさを感じてもらえれば、高い満足につながるはずだ。

 瀬戸内の魅力は、まず美しくキラキラとした海だろう。晴れの日が多く、世界に誇るおいしい果物がとれる場所にもなっているので、自然の豊かさや食の魅力も備わっている。美術館をはじめ文化を感じられる施設も多い。

 ただ、岡山は通過する人は多いが、降り立つ人は少ない。新幹線も止まるし、高速道路も整備されていて、交通の結節点である岡山からは東西南北どこにでも行ける。岡山を拠点に瀬戸内に出かけてもらおうと、さまざまな取り組みをしてきた。

 その一つが、創刊10周年となる観光フリーマガジン「WONDERFUL SETOUCHI(ワンダフル セトウチ)」。瀬戸内で輝いている人やモノ、コトを紹介する「素材集」となっている。今後は外国人でも読めるように多言語化するほか、SNSでの発信も強化したい。

 訪日客には変化が見られる。以前はアジアからの観光客が中心だったが、欧米からも多く訪れている。ただ、訪日客数はコロナ禍の前と比べてまだ30%減といったところ。国際的なホテルが非常に少ないことも岡山の課題で、誘致に力を入れたい。

 2022年にはJR岡山駅近くに、複合型施設「杜(もり)の街グレース」(岡山市北区)をグランドオープンした。立地している場所にはもともと大型商業施設があり、近隣には別の資本の大型商業施設がある。開発にあたっては競争よりも協調を重視した。

 例えば、フードホールに出店しているのは、小規模でも、瀬戸内の魅力が詰まった料理を提供する店舗が中心。出店・内装の費用がかかるからと、当初は申し込みに来てくれなかったが、出店してほしいなと思った店を1軒ずつ訪問して、経営者と酒を飲みながら口説いていった。

 今では1日に50万円近い売り上げを計上する店もある。このほか、杜の街グレースにはオフィスや居住施設もある。もし病気になってもすぐに受診できるよう医療モールを併設するなど、利便性の高い生活ができるようにした。