Sonosからヘッドフォン「Ace」。Atmos対応で“ホームシアターを再現”

AI要約

Sonosは、ブランド初のパーソナルリスニング製品として、ワイヤレスヘッドフォン「Sonos Ace」を発表。

ワイヤレスヘッドフォンはサウンドバーと連携し、ANC機能やDolby Atmosに対応。

TrueCinemaや環境に配慮した設計など、さまざまな機能や工夫が施された製品。

Sonosからヘッドフォン「Ace」。Atmos対応で“ホームシアターを再現”

Sonosは、ブランド初のパーソナルリスニング製品として、同社製サウンドバーと連携するワイヤレスヘッドフォン「Sonos Ace」を発表した。国内では6月7日より予約を受け付け、6月末に発売する。価格は74,800円、カラーはブラックとソフトホワイト。

アクティブノイズキャンセリング(ANC)機能を搭載しており、外出時にワイヤレスヘッドフォンとして使えるほか、自宅ではSonos製サウンドバーと連携。ボタンひとつで、テレビ音声の出力先をサウンドバーからSonos Aceに切り替えられる。

Dolby Atmos、ダイナミックヘッドトラッキングにも対応し、臨場感あるサウンドが味わえる。対応サービス・デバイスを使えば、サウンドバー連携時以外もDolby Atmosを楽しめる。

また2024年後半には、部屋の音響特性を測定して、サラウンドサウンドシステムを生み出すという「TrueCinema」も利用可能になる。同機能の詳細は後述する。

ヘッドフォンとしては、カスタム設計の40mmドライバーを採用。「どの音域でも性格で歪みのないサウンドを再現する」という。合計8基のマイクを搭載しており、うち6基がANC用マイクとして動作する。ヘッドフォンを装着したまま周囲の音を確認できるアウェアモードも利用できる。通話用マイクも備えるため、クリアな音声で通話やビデオ会議が可能。

ロスレスオーディオにも対応。Qualcomm Snapdragon Sound対応端末とaptX Losslessで、または付属のUSB Type-C to Type-Cケーブル、USB Type-C to 3.5mmステレオミニケーブルを使うことで、ロスレスオーディオを楽しめる。Bluetooth 5.4準拠。

バッテリー駆動時間はANCオンまたはアウェアモード起動時で最大30時間。付属のUSB Type-Cケーブルを使えば3分の充電で3時間使える急速充電も利用できる。

ヘッドフォン右側のイヤーカップ後部に、上下にスライドしたり、押し込んだりできる「コンテンツキー」を搭載。音量調整や楽曲の再生停止、長押しでSonosサウンドバーからの音声スワップなどができる。コンテンツキーの下側には、ANC/アウェアモードを切り替える物理ボタンを備える。左ハウジングには電源ボタンとUSB Type-Cポートを搭載。

本体には装着検出機能も搭載しており、ヘッドフォンを外すと再生が一時停止され、装着すると自動で再開される。

ヘッドフォン本体は“クワイエットラグジュアリー(控えめなラグジュアリー)”を意識したというシンプルなデザイン。なめらかなマット仕上げやメタルパーツがアクセントとなっており、「流行にとらわれずにあらゆるスタイルを引き立てる」という。

またワイヤレスヘッドフォンでありがちな「左右の向きが分かりにくい」という問題を解決するべく、イヤーカップ内側に左右で異なる対比色を採用し、ひと目で左右を判別できるようにしている。

そのほか、ヘッドバンドのデザインに角度をつけることで、視覚的に本体の前後が分かるようになっているほか、右側のイヤーカップにのみブランドロゴを印字するといった工夫も施されている。

イヤーパッドは「枕のように柔らかい」というメモリーフォームをヴィーガンレザーで包みこんだ仕様。Sonosでシニア・インダストリアル・デザイナーを務めるサム・プレンティス氏によれば、時間をかけて開発したメモリーフォームは「『これでSonosはマットレスも売れるようになったね(笑)』と言われるほど」好評だったという。

またイヤーパッドが汚れた場合は布で拭き取ることができるほか、マグネットによる着脱式のため交換も可能。交換用イヤーパッドも別売りオプションとして用意する。イヤーカップの角度を調整するヒンジを本体内部に隠す仕様にしたことで、髪やアクセサリーが巻き込まれる心配もないという。

環境にも配慮されており、Sonos Ace本体には再生プラスチックを17%使用している。これは「強度などを考慮すると最大限の数値」(プレンティス氏)とのこと。そのほかのSonos製品同様、パッケージは100%再生紙を使っている。

付属のトラベルケースはペットボトルから作られており、再生フェルトを75%使用。ケース内にマグネットで固定できるケーブルポーチも同梱する。

■ Sonosサウンドバーと連携。ヘッドフォンでもサラウンド体験

Sonos Ace最大の特徴は同社製サウンドバーと連携することで、テレビの音声をSonos Aceで楽しめること。最大7.1.4chのDolby Atmosをサポートしているほか、ステレオコンテンツも7.1.4chにアップミックスして再生することもできる。Sonos製サウンドバーを経由してサウンドをワイヤレス伝送しているため、さまざまな動画配信サービスやテレビ番組、ゲームなど、あらゆるもので同機能は利用可能とのこと。

発売時点で、Sonos Aceと連携できるサウンドバーは「Sonos Arc」のみだが、今後のアップデートで「Sonos Beam(Gen2)」や「Sonos Ray」にも対応する。

Sonos Aceには慣性計測センサー(IMU)が搭載されており、頭の向きや動きの変化を検出できる。これによりダイナミックヘッドトラッキング機能が利用可能で、頭がどこを向いていても、テレビから音が聴こえてくるような空間オーディオを実現したという。

ダイナミックヘッドトラッキングを使った空間オーディオでは、Sonos Aceで検知したヘッドトラッキングのデータをSonosサウンドバー側に送信。サウンドバー側で受け取ったモーションデータを空間オーディオのデータにレイヤーとして追加してSonos Arcに送り返すことで、臨場感ある空間オーディオを実現する。

Sonos特任プロダクト・マネージャーのスコット・フィンク氏は「家族が寝ている場合や、パートナーがリモートワーク中の場合、真夜中の場合は、テレビを観たくても大音量で音を聴くのが難しいことがある。そんなとき、Sonos Aceであれば、音質を妥協せずにテレビ・映画を楽しめる」としている。

「Sonos Aceの目標は、完全に没入できるパーソナルなサウンド体験を作ること。“ただヘッドフォンで聴いているだけ”の音は作りたくなく、リビングに設置されたサラウンドシステムと同じ体験を提供したかった」

「サウンドチューニングにおいては、テレビ・映画・音楽など、様々な分野で受賞経験を持つ専門家と1,000時間のテストを行なった。例えばグラミー受賞歴のあるエミリー・ラザールやアカデミー賞録音賞を3度受賞しているクリス・ジェンキンスなどに協力してもらった」

「こういったクリエイターをSonosラボに招いて、自身のコンテンツをSonos Aceで試聴してもらい、正確な音か、調整すべきポイントはどこかを指摘してもらった。そして彼らが『自分のスタジオでミックスしたとおりのサウンドだ』と評価してくれるまでチューニングを繰り返したんだ」

■ 「脳が想像する“聴こえるべき音”」を届ける「TrueCinema」

発売後のアップデートで提供される「TrueCinema」は、「ヘッドフォンを着けていることを忘れるほどの軽やかな装着感でリアルなサウンド体験を楽しめる」というもの。TrueCinemaを活用すると、通常は頭内定位するヘッドフォンの音が、スピーカーで聴いているようなより自然な聴こえ方になるという。

フィンク氏は「人は部屋に入ったとき、無意識に(その環境で)音がどう聞こえるべきかを判断している」と語る。

「例えば浴室では音が反響するはず、広いリビングでは反響は少なくなるはず、といった具合だ。しかし、通常のヘッドフォンでは、その脳が想像する聞こえるべき音を届けられない。この不一致を解決するのはTrueCinemaだ」

具体的にはSonosスピーカーで採用されている部屋の壁、家具、その他の面からの音の反射を測定して音質を向上させる「Trueplay」技術を活用。Sonos Aceを装着した状態で視聴位置に座り、測定を開始すると、Sonos製サウンドバーから測定用のトーン音が発せられる。

これをSonos Ace内蔵のマイクで計測することで部屋の環境を解析。部屋の環境データを空間オーディオのレンダリングの中にレイヤーとして組み込むことで、広がりのあるサウンドを実現する。

このTrueCinemaや空間オーディオ、ダイナミックヘッドトラッキングの各機能は、Sonosアプリから操作でき、個別にオン/オフを切り替えられる。

■ Sonos製ヘッドフォンは「長年要望が多かった」

同ブランドでは、これまでサウンドバーやサブウーファーといったホームシアターシステム製品やポータブルスマートスピーカー製品などが展開されているが、ヘッドフォン製品の投入は今回が初めて。

Sonosでプロダクト・マーケティング・マネージャー主任を務めるデーン・エスティス氏は「長年ユーザーからオーバーイヤーヘッドフォンを発売して欲しいという要望を多く受けていた。今回その声に応える形で製品を発売する」としている。

ブランド初のパーソナルリスニング製品としてイヤフォンではなくヘッドフォンを選んだ理由については、フィンク氏が「市場調査の結果、音質とデザイン、快適性を兼ね備えた製品として、ヘッドフォンはビジネスチャンスが大きかった」と説明した。

■ 音を聴いてみた。サウンドバーからのスワップは一瞬

短時間ながらSonos Aceを試聴してみた。メモリーフォームを使ったイヤーパッドは肌触りも柔らかく、耳に優しく、ぴったりとフィットする。ヘッドバンド形状も頭にフィットするため、装着時の安定感は高い。個人的にはほんの少しだけ側圧が強く感じられたが、そのかわり頭を動かしてもヘッドフォンがズレてしまうことは一切なかった。

今回は静かな屋内での試聴だったが、ANCをオンにすると周囲の話し声などは聞こえなくなり、しっかりコンテンツに没入できた。ノイズキャンセルにありがちな“圧迫感”もほとんど感じられなかったので、十分日常づかいできそう。ただ周囲の音を取り込むアウェアモードでは「サーッ」というホワイトノイズが少し気になった。

肝心のサウンドは、まずiPadとペアリングして音楽からチェック。「エド・シーラン/Shivers」を聴いてみると、冒頭から量感ある低域が再生されて迫力は十分。モニターヘッドフォンなどと比べると、中高域の解像感には物足りなさもあるが、それでもイントロのクラップやボーカルなどは十分明瞭に再生された。

女性ボーカル楽曲「ビリー・アイリッシュ/What Was I Made For?」では、広いステージに音が広がりつつ、ビリー・アイリッシュの吐息が多めのボーカルが耳元でクリアに再生されて、世界観に惹き込まれる。

続けてはホームシアター試聴として、サウンドバー「Sonos Arc」との連携をテストしてみた。サウンドバーからSonos Aceへの音声切り替えは、イヤーカップ右側に搭載されているコンテンツキーを3秒長押しするだけで、かなりスムーズ。Sonos Aceからサウンドバーに“音を戻す”場合も、コンテンツキーを長押しするだけで、別途アプリを操作する必要もなく、快適に使用できた。

今回は映画「バービー」や「DUNE/デューン 砂の惑星」のワンシーンを試聴。「バービー」ではセリフがクリアに聞こえ、「DUNE/デューン」では爆発シーンなどで、迫力ある重低音を味わうことができたが、特に「DUNE/デューン」の爆発が連続する戦闘シーンでは、爆発音の迫力に負けて、登場人物たちの雄叫びや息遣いなどが少し聞き取りにくく感じる部分も。Sonosアプリから低音・高音・ラウドネスの調整ができるので、このあたりは好みやコンテンツにあわせて微調整したほうが良いかもしれない。

ダイナミックヘッドトラッキングも試してみた。同機能をオンにすると、頭をどの方向に向けても、テレビから音が出ているようにサウンドが定位するので、装着感の高さも相まって、ヘッドフォンを着けていないかのようなサウンド体験が味わえた。