ポケトークが「鬼門のアメリカ」でつかんだ自信 苦難続く日系ITスタートアップの活路となるか

AI要約

日本のITスタートアップがアメリカ市場で成功を収めている事例について報じられている。

AI通訳機「ポケトーク」を手がけるポケトーク社がアメリカでの売上高が急増し、法人顧客向けに大きな商機を見出している。

ポケトークは日本のソースネクストから生まれたスタートアップであり、独自の経緯を持つ。

ポケトークが「鬼門のアメリカ」でつかんだ自信 苦難続く日系ITスタートアップの活路となるか

 日本のITスタートアップにとって、鬼門となっているアメリカ市場の開拓。そこに一石を投じる動きが生まれている。

 AI通訳機「ポケトーク(POCKETALK)」を手がける運営会社のポケトークは、2024年1~3月期のアメリカ事業における売上高が前年同期比2.2倍の374万ドル(約5.6億円)となり、アメリカ法人としての営業損益が四半期ベースで初めて黒字化した。

 英語を母国語としない移民の増加を背景に、教育機関向けの販売が伸びている。そのほか、病院や警察、郵便局など、行政を含む法人からの受注が急増しているという。

 ポケトークは2017年に発売され、当初は日本におけるインバウンド需要が大きかった(アメリカ向けの発売は2019年から)。ただコロナ禍の影響でインバウンド需要が減り、コロナによる経済活動の制約をあまり受けなかったアメリカでの存在感が高まった。

■法人顧客向けに大きな商機

成果が上がったのは、現地のPR会社と組んだマーケティングや大手ITディストリビューター(販売店)の活用だ。今後は2023年後半から提供を始めた、「Ventana(ベンタナ)」と呼ばれるツールも本格的な収益貢献が見込まれている。

 ベンタナは、法人顧客がユーザーの翻訳内容や使用頻度などを、複数あるポケトーク端末を通じて一括管理できるオプションの定額制サービス。取得したデータを分析することで、自社サービスの向上や生産性の改善、売り上げの増加につなげることができる。

 「アメリカはもともと個人向けの需要はあまりなかったが、B to B(法人向け)に大きな商機があることがわかった。一度パブリックセクターに導入が決まると信用が上がるので、そこからどんどん販売が伸びている」と、ポケトークの松田憲幸社長兼CEO(6月1日付で会長兼CEOに就任)は語る。

 ポケトークの運営会社は、その成り立ちや資本構成もユニークだ。

 元はパソコンソフトなどを販売するソースネクスト(東証プライム市場上場)のサービスとして生まれたが、2022年2月に会社分割で法人化された。新会社がポケトークの事業を承継し、急成長を目指す“スタートアップ”として生まれた経緯がある。

 2012年に設立されたソースネクストのアメリカ子会社も、同じタイミングでソースネクスト・インクからポケトーク・インクに社名変更し、ポケトーク社の傘下に入った。