「飲んでも酔いたくない」にどう応える? 缶チューハイ、低度数チャレンジ続々

AI要約

RTD酒類市場が変化し、低~中度数アイテムの商品多様化が進んでいる。

コロナ禍により低度数化が急速に進み、ストロング系チューハイからのシフトが見られる。

大手メーカーが8%以上の商品から撤退し、より低度数に焦点を当てた商品開発が進む。

「飲んでも酔いたくない」にどう応える? 缶チューハイ、低度数チャレンジ続々

この5年あまりでがらりと市場が変化した、缶チューハイなどのRTD酒類。コロナ禍による飲み方変化やビール類酒税の改正もあり、メーカー各社では広がるニーズに対応した新たな切り口の製品を次々と投入。なかでも、低~中度数アイテムの商品多様化が進んでいる。

コロナ禍以降の売場で目に見えて変わったのは、低度数化が急速に進んだことだ。

下のグラフでは、RTDの度数帯別シェア推移をPOSデータを元に示した(㈱マーチャンダイジング・オン RDS市場データ スーパー全国)。

コロナ前の19年には販売数量の41%を占めた度数8%以上の商品は、今年1~7月の段階で20%と半減。代わって低~中度数が80%にまで拡大している。

19年ごろにかけてブームが続いた、度数9%前後のいわゆるストロング系チューハイ。平日の帰宅後などに、短時間でコスパよく酔えることが支持された。

だが20年からのコロナ禍で家飲み時間が増えたのを契機に、逆に「あまり酔いたくない」「時間をかけて少しずつ飲みたい」といった意識が生活者の間に広がった。

短時間で酔ってしまうのは楽しくないし、むしろコスパが悪い。さらには酔うこと自体が生活の質を落とす、健康にもよくない――そんな考え方も若年層などの一部に浸透しつつあるようだ。

業界では、度数8%以上のRTDから大手が撤退する動きが今年に入り鮮明化。アサヒビール、サッポロビールがこうした方針を明言しているほか、主力ブランドに9%を品ぞろえするサントリー、キリンビールも開発の軸足を7%以下に移したとみられる。

さらに、より低度数に焦点を当てた開発も目立ってきた。

宝酒造が10日から発売した「発酵蒸留サワー」3品。

同社の調べでは「お酒を飲みたいけど酔いたくない」と感じる人が一定数いることが分かった。そこで同社の強みである焼酎技術を生かし、度数3%でも酒の飲みごたえや満足感が楽しめる缶チューハイとして開発した。

この度数帯の商品は従来も存在したものの、大半が女性や若年ユーザーを意識した甘いフレーバー。一方で「甘くない」を謳う商品は軒並み5%以上だった。「甘くない×低度数」という、市場の空白地帯を突いた商品として業界からも注目を集める。