過半が通期業績を上方修正 12月期電子部品各社、クルマ高度化やAIなどけん引

AI要約

電子部品メーカーの業績が堅調であり、2024年12月期上期は多くの企業が期初計画を上回り、過半が通期業績予想を増額修正。主な需要はモバイル端末関連やAI、ADAS関連であり、売上高や営業利益は前年比で増加。ただし、産業機器部品や自動車関連の売り上げは低調であり、市場の将来展望は慎重な見方が増えている。

過半が通期業績を上方修正 12月期電子部品各社、クルマ高度化やAIなどけん引

 12月期決算の電子部品メーカーの業績が堅調だ。2024年12月期上期(1~6月)は多くの企業が期初計画を上回り、過半の企業が通期業績予想を増額修正した。下期も、先進運転支援システム(ADAS)関連やICT関連、AI(人工知能)関連など成長市場でのビジネス拡大を図る構えだ。

 24年度1~6月期業績は6社中4社が前年同期比増収、うち3社は2桁増収を達成した。営業利益は増益または黒字転換が4社となっている。上期の決算発表に合わせて、売上高は3社、営業利益は4社が通期業績予想を上方修正した。

 前年同期は低迷していたノートパソコン(PC)やタブレット端末などをはじめとするモバイル端末関連需要の回復や、生成AIの広がりに伴うサーバー/データセンター(DC)関連投資の回復、自動車の高機能化に伴うADAS関連などでの需要増が各社の業績をけん引した。前期まで低迷していた医療機器関連の部品需要も改善傾向となった。加えて、円安が各社の売り上げ・利益を押し上げ、部品の売価アップも業績改善に寄与した。

 大幅な増収増益となったマブチモーターは、自動車電装機器市場向け売上高が前年同期比17.9%増と大幅に増加。中型電装用途のパーキングブレーキ用やバルブ用、小型電装用途のミラー用、ドアロック用、エアコンダンパー用などのモーター販売がそれぞれ伸びた。営業利益は、増収効果に加え、売価・プロダクトミックスの改善や円安効果などにより、前年同期比2倍以上の大幅増益だった。

 I-PEXの売上高は、ノートPC向けコネクターやDC向け投資の回復に伴う大容量HDD向け成形部品の増加などにより、前年同期比2桁増となった。四半期ベースでも、4~6月期は5月に開示した修正計画を売り上げ・営業利益ともに上振れ、今期2度目の通期連結業績予想の増額修正を発表した。

 NISSHAは、全事業で前年同期比増収・営業増益となり、全体の売上高は2割強の大幅増となった。事業別売り上げは、ディバイス事業が前年同期比30.3%増と大きく伸長。主力製品のフィルムタッチセンサーがタブレット向けや業務用端末(物流関連)向けで回復し、業績拡大をけん引した。

 一方、産業機器・設備投資関連の部品需要は、上期もサプライチェーン在庫過多の状況が継続して低調に推移した。半導体製造装置向け需要も調整が継続し、太陽光発電など新エネルギー関連装置向けも低調だった。

 自動車関連でも、世界的な電気自動車(EV)市場の成長鈍化や、中国EV市場における競争激化などにより、電子部品の販売も伸び悩んだ企業が目立った。

市場見通しは慎重な見方も

 7~9月期もこれまでの流れが継続し、スマートフォンやノートPC、DCなどのICT関連や、ADAS関連などの部品需要は堅調さが継続する見通しだ。

 ただ、10~12月期以降の市場見通しは、やや慎重な見方も強まってきた。背景には、欧米での新車需要の減退やリセッション、中国経済の悪化、日米の金融政策変更に伴う想定以上の円高などへの懸念がある。

 顧客在庫調整が続く産機・FA関連の部品需要も、一部のアプリケーションを除き、本格回復の時期が見通せない状況が継続している。今後の市場動向に注視する電子部品メーカーが増えている状況だ。