折れていなかった個人の投資意欲

AI要約

8月の対外証券売買契約等の状況が発表され、家計部門と機関投資家の投資動向が注目された。

家計部門は外貨建て資産への投資が拡大し、8月は対外証券投資が過去3位の高水準であった。

投資の内訳や市場の動向を踏まえ、個人投資家の動きや米金利、円相場への期待が表れた状況である。

折れていなかった個人の投資意欲

【これはnoteに投稿された唐鎌大輔(みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト)さんによる記事です。】

9月9日、財務省から発表された8月分の「対外及び対内証券売買契約等の状況」は相場急落を受けた家計部門の投資意欲がどのように変化したのかを確認する意味で非常に興味深い内容でした。また、機関投資家の中でも目立った動意があり、この点も注目されるものでした:

【国内投資家の外債買い最大 8月、円高や米利下げ観測で】

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周知の通り、2024年1月以降、非課税枠が拡充されたNISA(新NISA)が導入され、家計部門は外貨建て資産(とりわけ米国株)への投資を重ねてきました。その勢いは昨年までのそれとは別次元に強いもので、円安相場の一因とも目されてきました:

【家計の円売り、はや前年上回る 新NISAで1~5月5.6兆円】

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8月、投資信託委託会社等を経由した対外証券投資は+1兆1702億円の買い越しで、これは過去3位(1位は今年5月、2位は今年1月)の高水準でした。しかし、注目すべきはその資産内訳であり、株式・投資ファンド持ち分が+7689億円、中長期債が+3881億円、短期債が+132億円となっていました。株式・投資ファンド持ち分の買い越し額は年初来で最低、中長期債の買い越し額は年初来で最大という構成です。景気循環の潮目を踏まえた上で株式・投資ファンド持ち分から距離を取り、急遽浮上した9月FOMCでの▲50bp利下げ観測やこれに付随する連続利下げ観測に合わせて債券投資にベットする個人投資家が増えたという状況にも読めます。端的には米金利の先安観とこれに合わせた円の先高観への期待が統計に表れているとも読めるでしょう。

いずれにせよ、これで投信経由の対外証券投資は年初8か月間合計で+9兆397億円に達しており、これは2023年実績(+4兆5447億円)の概ね倍に相当する。生命保険会社や金融商品等取引業者(証券会社)などと比較しても明らかに異質の動きと言えます: